徳永有美が専業主婦を経て報ステで得た居場所 「いろんな意味で毎日限界点と戦っています」

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河崎:プロフェッショナルとしてのシャープさを維持することの難しさは、小さなお子さんを育てながら仕事をする、ワーママといわれるたくさんの女性が皆さん口にされることですよね。子育てと仕事の繰り返しとは、こんなにも人間を疲れ果てさせてしまうのかと。徳永さんはご自分をアップリフトするとき、具体的にどんな分野の本を読んだのですか。

徳永:もともと広告業界に就職希望だったので、その分野の本が大好きなんです。なので、広告関連の本を読むことが多いです。15秒や30秒の尺に、研ぎ澄まされた言葉やビジュアルや時代背景も映し出されている。かっこいい感性と凝縮した言葉が過不足なく入っているダイナミズムがすごいなと思っていて。

河崎:短い時間に最適な言葉を的確に入れていくというところは、広告もニュースのコメントも似ているのかもしれないですね。

徳永:日々信じられないくらいたくさんのニュースが舞い込んできて、いろいろなことを感じるんです。それをどう言葉にするか。ディレクターたちの作ったVTRがあって、その背景となる彼らの思いがあって、スタジオの雰囲気があって、ニュースは生物(なまもの)だと感じます。

完璧ではないからこそ、ありのままの自分でいたい

河崎:たった一言の裏にある重層的な背景やそれゆえの重みって、ありますよね。

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徳永:私の場合は、それを狙ってすると気持ち悪くなってしまうんです。上手にできる人もいらっしゃると思うんですけれど。母として妻として女として、立場によって見え方はもしかすると変わるかもしれない。でも変わらない部分もある。私はどれでもありどれでもない。

ではどの立場から発言するかと考えたら、スタジオという場で求められるのは、結局、自分の芯みたいな部分でしかないんです。どの立場の自分も、自分の芯みたいなものも、すべて完璧ではないからこそ、スタジオでありのままの自分でいたい。

自然な姿でいたいと思うんですが、でもやっぱりすぐカッコつけちゃうんですよね。「報道ステーション」という番組は歴史もあるし、たくさんの人が関わっている。プレッシャーもあるし、あの椅子(キャスター席)に座ると、うまくやらなきゃとか、品よくしなきゃとか(笑)。

でも、そんな感情をすべて削ぎ落として伝えたい。視聴者の皆さんが今、どんな風に番組を見てくださっているのか。ソファに座りながらなのか、ベッドに横になりながら見てくださっているのか、そういうことを想像しながら、そのままの自分がフラットに伝えられたら、というのが理想形です。(後編に続く)

河崎 環 フリーライター、コラムニスト

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かわさき たまき / Tamaki Kawasaki

1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭高校から親の転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆をつづけている。子どもは、長女、長男の2人。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)。

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