地元の若手エリートが集う「青年会議所」の正体 政治家や経営者などを続々と輩出
2つ目は日本青年会議所の会頭が委員として参加している政府の有識者会議に会頭随行員のオブザーバーとして参加できたことだ。今日本では、多くの有識者会議が設置され、その中で議論されたことが閣議決定され、関係省庁を通じて各自治体や業界に政策が割り振られている。自分の住んでいる国の方向性が話し合われている会議に参加できたことは、かけがえのない経験だった。
政府関係者でも、企業経営者でも「JC」です、と自己紹介するとすぐにわかってもらえる利点もある。例えば、昨年、大阪で地震が発生した際に、大阪府内の消防署を訪問した際に、「神奈川県から来たJCです」と名刺を渡したところ、地震の被害などいろいろな話を聞くことができた。これは、日ごろからJCと地元が緊密に連携しているからだろう。都市部より地域の方がJCの認知度が高いといわれていることを確認することとなった。
3つ目は地元に地域のことを真剣に考える人間がたくさんいることに気づけたことである。会社にいても仕事では地元のことなど話題にも上らないだろう。JCはひたすら地域のための話し合いを行っている。少子化で元気のない地元をどうやって盛り上げていくか、どうすれば地域が活性化するかなど、答えのないことを時に喧嘩し、時に“ノミニケーション”しながら一生懸命考える。そんな経験をさせてくれた。
地域JCから日本JCにお金が回りすぎ?
一方、JCにも問題はある。冒頭にも書いたとおり、2018年2月には「宇予(うよ)くん」と称するキャラクターがツイッター上で、中国や韓国、護憲派、政治家、報道機関を批判するツイートを繰り返し、JCが謝罪する事態に。JC自体は「担当者から投稿されたのはすべて担当者の個人的見解」としているが、それ以前から「右寄り」と見られがちではあった。おそらく原因は国旗掲揚や国歌斉唱があるからだろうが、筆者の感覚では中道派が多いように感じた。在日韓国人や外国籍の会員も活動していることからも、右派団体でないことはわかるだろう。
地域のJCから、日本JCにお金が「回りすぎ」だという批判もある。確かに予算規模を考えると、100万円単位の地域のJCと億単位の日本JCは規模が異なる。ただ、公開情報を見ればわかるが、日本JCの現役役員には報酬が発生していない。すべてが事業に使われており、私腹を肥やすような行為はできない。
「持続可能性」という問題も抱えている。会員数は毎年前年比3%ずつ減っているほか、会員の平均年齢も上がり、毎年会議所の数も約30減っている。1月に京都会議で鎌田長明会頭は、「このままでは10年後にメンバー数が1万人を切り、会議所数は半分になっていてもまったくおかしくない」と危機感を示している。
元会員の立場から、会員が減少している理由を考えてみると、加入後の金銭や業務負担が重い割に仕事につながらないことや、家族との時間が削られることなどがあるのではないか。ほどほどに活動していたと自認する筆者ですら、「またJC!?」と妻から言われることがあった。家族参加型、託児所の設置、日中開催、オンライン会議などできることはたくさんあるはずだが、過去の習慣から抜け出すのは難しいようだ。
他国の青年会議所に比べ、女性会員が少ないことも指摘されている。旧来型日本社会の縮図と言えばそれまでだが、女性が会員になって初めて実地に至る事業やイベントもあるだろう。これまで地域に根ざし、地域の問題解決などに取り組んできたJCだが、岐路に立たされている今、柔軟な組織運営に加え、地域でさらなる存在感を示す必要性に迫られている。
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