地元の若手エリートが集う「青年会議所」の正体 政治家や経営者などを続々と輩出

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したがって、正副理事長や理事、委員会の役職者になると、月に4~5回はJC活動に参加することとなる。理事長ともなると、近隣の青年会議所との打ち合わせ、地元の各種団体、OB会、都道府県、地方、全国の青年会議所との会合も加わる。そのため、仕事に関与する時間は大幅に少なくなるだろう。

では、実際JCはどんな活動をしているのだろうか。例えば、藤沢青年会議所では、大きく青少年、地域振興、会員拡大、対外、内部事業を行っていた。青少年事業は、主に小学生を対象とした事業で、学校では体験できないような取り組みを企画し、有志の子どもや親子が参加することができる。例えば、市庁舎の建て替えに伴い、松(藤沢市の木)を1年かけて育てた後に新庁舎に植樹するという取り組みをした。

事業費はすべて会費で賄われている

地域振興事業については、藤沢市は2020年のオリンピック・パラリンピックのセーリング競技の会場でもあることから、オリンピックに関する講座を開き、サイクリングのパラリンピックメダリストと接するイベントを実施。その際、1人の学生がサイクリングの選手として活動し、地元出身のメダリストとの会話に興奮していたことが思い出される。

このほかにも、観光のピーク時に大災害が発生した場合に、地元住民以外の観光客は避難の場所があるのか、いかにして速やかに帰宅を促すかなど、日常生活では考えることのない事態を想定した勉強会を開催。企業でも、行政でもやっていないことを独自の視点とネットワークで開催にこぎ着けるところは、JCならではといえるだろう。

山梨・甲府で開かれたベーコンフェシティバルには1万人以上が訪れた(写真:青年会議所提供)

ほかのJCに目を転じると、かなり大規模なイベントを開催していることがわかる。例えば、甲府JCのベーコンフェスティバルは一般参加者1万人以上を動員。出雲JCはフィリピンのスラム街であるスモーキーマウンテンに地元の高校生を派遣し、命や貧困について学ぶ機会を提供し、さらに対外的な発表会を開催した。

おそらく読者の皆さんの地元でも、気づかなかったが実はJCが裏で企画したり、手伝っているイベントは多いのではないだろうか。横浜のイベントとして有名な横浜開港祭は毎年横浜JCが主催団体の1つとして活動している。他にも、国際アカデミーというプログラムでは、世界80カ国の青年会議所メンバーと1週間寝食を共にし、相互理解と友好を図っている。

JCは、これらをすべて無償のボランティアで行っている。それどころか、JCの活動は会員の会費で賄われているので、会員自ら金を出し、自ら企画し、時に企業や行政を巻き込んでいるのだ。筆者が所属していた藤沢青年会議所の場合、入会金が6万円、年会費が12万円だった(入会金などは青年会議所ごとに異なる)。日本JCの場合、予算が15億円ほどあるので、大掛かりなイベントを企画することも可能となり、年に数回ある全国規模の運営に充てられている。

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