母はデイサービスでリハビリに励み、歩けるところまで回復した。
だが2014年、骨粗鬆症が悪化。救急車で搬送され、そのまま入院。数日後、院内感染により熱発した。主治医は「薬が効きません。もう治療しなくてもいいですよね」と香川さんに訊ねる。
その頃妹たちは、母の介護に対する考え方の相違から疎遠になっていた。香川さんは「母の存在は自分たちの支えになっている」と思い、病院に交渉を試みる。
「院内感染は病院側の管理の問題です。『薬が効かない』『治療やめます』では納得がいきません」。すると病院側は、「できるだけの対処はしてみます」と応え、配分が難しいという薬を投与。母は持ち直し、退院することができた。
命を永らえさせ、かえって苦しませてしまった
ところがその約2週間後、様態が急変。再度入院して検査したところ、足の壊死が発覚。薬の副作用で糖尿病を発病していた。治療法はなく、「膝上から切断するしかない」と医師に告げられる。
「両足を切断して幸せかな。私なら切断してでも生きて、息子の成長を見ていたい。でも母は高齢で認知症もあり、自分では排泄も食べることもできなくなっていました。院内感染したときには、ここまで考えもしなかった。私のせいで命を永らえさせ、苦しませてしまったんです」
早く切断しないと身体中に毒素が回り、とても苦しい状態になる。妹たちに連絡しても返事はない。切断するかしないかの判断は、香川さん1人に委ねられた。
「私はその頃、片づけ支援サービスを提供するライフオーガナイザーの資格を取り、活動を始めていました。恥ずかしい話ですが、私は決断できないまま、生前整理の2級講座を受けに行ったんです」
香川さんが病院に戻ると、母は体中管だらけだった。足は切断されていない。その代わりに、痛みを緩和するモルヒネの投与や、水分や栄養を入れるための管につながれていたのだ。
母は約2カ月後、84歳で亡くなった。
香川さんは現在、片付けや生前整理のプロとして「大切なものを選ぶ片付け」を教え、「寄り添い片付けサポート」を提供している。
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