観光客とゴミであふれる「カプリ島」がした決断

「青の洞窟」を守るために一歩踏み出した

ただ今日のカプリ島では、出費の面で作家たちが滞在することは考えにくい。島の住宅費はロンドンやマンハッタン中心部の生活費に匹敵するほどだ。目抜き通りにはミッソーニ、フェンディ、バレンティノ、グッチといった高級ブランド店が並び、オフシーズンでもジェニファー・ロペスやキアヌ・リーブスといったセレブの姿が目撃されない日はない。

しかし、セレブや高級ファッションは真のカプリ島の姿ではないと、島中心部のピアッツェッタにあるカフェ「Bar Tiberio」のオーナー、アレッサンドロ・ピサンツィオは言う。彼はプラスチック製品の禁止について、紙のストローなど代替品のほうが高くつくものの、それを支持している。

観光客の85%はなんと日帰り

ピサンツィオのような地元住民にとっては、観光業やサービス業の仕事があることで人口約1万5000人を維持している。「私たちの島を守るために行動を起こす必要がある」とピサンツィオは言う。「この美しさを求めて人々はやってくる。私たちは毎日見ているから、それがどれだけ美しいのかをわかっていない」。

デ・マルティーノ市長の推計では、夏は1日約2万人にもなる観光客の85%は日帰りで、早朝のフェリーで到着し、ディナーの時間帯の前には去っていく。たくさんのごみは残していくが、お金はわずかしか落とさない。

観光客の85%は日帰りのため、たくさんのごみは残していくが、お金はわずかしか落とさない(写真:Nadia Shira Cohen/The New York Times)

カプリ島の住民たちはこうした観光客を「mordi e fuggi」という言葉で表現する。イタリア語で「かじって逃げる」の意味で、突然やってきてすぐに立ち去るということだ。「まさにファストフードの観光版だ」と話すのは、画家のアントニオ・パロンボ(60歳)だ。「グレアム・グリーンのような人はいない」。

アメリカ・アイオワ州からカプリ島を訪れていたボニー・ブラウンと夫のフレッドは、朝にケーブルカーでピアッツェッタにやって来た。2人とも、イギリスのツアー会社と連絡を取り合う通信機器を首から下げ、島へはツアー会社のプライベートボートで来たという。彼らが島で購入したのは、ベースボールキャップにレモンジェラート、お土産用の菓子。滞在時間は6時間半だった。

ブラウンは日帰り客に対する批判に理解を示した。「彼らの気持ちはわかる」と彼女は言う。「私もアイオワシティーでの野球渋滞は嫌い。でも仕方がない。観光に生きる者は観光に滅びる、ということ」。

© 2019 The New York Times News Services
(執筆:Rod Nordland、翻訳:中丸碧)

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