富士フイルム「プロジェクター市場」参入のわけ デジタルアートやプラネタリウムに商機

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それ以外にもオフィスエントランスやショールーム、ショッピングセンターなどの商業施設、野外コンサート会場など、Z5000が想定している用途は幅広い。「今までプロジェクターが設置できなかった場所にも設置できるプロジェクターを開発した。諦めていた場所にも設置できるなら、これまで飽和していた市場も広がるはず」と飯田氏は力を込める。

実際、Z5000の機能は空間表現など大規模投影に特化している。壁からの距離が75センチしかなくても、100インチ(約2.5メートル)の巨大画面を投影でき、省スペース化に対応した。

さらに、天井や部屋の真ん中に置かなくても、例えばショールームで来訪者の目が届きにくい部屋の隅に設置し、映像を見せることのできるレンズシフト機能も盛り込んだ。

プロジェクターは光学系技術の集大成

プロジェクター初参入にもかかわらず高機能商品を投入できたのは光学系技術を培ってきたからでもある。光源から出る光を的確に反射させて映し出すために、Z5000は20枚以上のレンズを組み合わせている。的確に投影するためにガラスの高度な摩耗技術や細かな角度調整のノウハウが必要だが、富士フイルムにはカメラやテレビカメラレンズなどを手掛けてきた実績がある。「(Z5000には)カメラや映像など光学技術を培ってきた集大成が込められている」(飯田氏)。

気になるZ5000の値段は1機100万円弱。オフィス向けのプロジェクターの多くが5万~10万円であるのと比べても高価だ。発売直後の4月に「京都国際写真祭2019」で10台導入されるなど、少しずつだが実績を増やしている。「オフィスの会議室向けに販売しようと思っていない。販売先も施工業者や施設や機材の貸し出し業者などが中心だ」(飯田氏)との戦略は明確だ。

今後の目標は「累計の売上高を早期に100億円にする」(同社)。単純計算で約1万台を販売する必要があり、目標までの道のりはまだ遠い。「まずは製品のラインアップを増やし、細かな用途に応じて3機種程度を展開して拡大につなげたい」(飯田氏)。新たな用途を開拓できるかが焦点となる。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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