富士フイルムが名門ゼロックスを買えた理由 古森会長「当社グループとして現金流出ない」
「20世紀の米国産業における重鎮の独立が終わる」。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、その買収劇を感傷的にも思える言葉で表現した。
富士フイルムホールディングスは1月31日、米事務機大手ゼロックスの株式の過半となる50.1%を取得し、傘下の富士ゼロックスと経営統合させることを発表した。統合後の社名は「富士ゼロックス」となる。創業110年超の米国の名門はペーパーレス化に苦しむ中、日本企業の下で再建を図ることになった。ただ本社は日米双方に置き、ニューヨーク証券取引所への上場も維持する。すべての手続きは2018年度第2四半期に完了する予定だ。
世界最大のコピー機・複合機メーカーに
統合後の新会社は、米HP(旧ヒューレット・パッカード)やキヤノン、リコーを抜き、コピー機・複合機の売上高(日本円ベース)で世界首位となる。富士フイルムHDの古森重隆会長は、「全世界での売り上げ拡大、コスト削減を通じた相乗効果が見込める」と胸を張る。
富士ゼロックスは1962年に英ランク・ゼロックス(現・米ゼロックス)と富士写真フイルム(当時)の合弁会社として発足。富士ゼロックスは日本を含むアジア太平洋地域、米ゼロックスは欧米や南米、アフリカといった具合に営業エリアを分けていた。それが今回の統合により取り払われるというわけだ。
「かなりスピーディーな決断だったが、極めて価値創造的なものだと考えている」。古森会長はそう言って一層の自信を見せる。というのも、「富士フイルムグループとして現金の外部流出は一切伴わない」(同)からだという。
「従来からもっといい協力ができないか、関係を前進させられないかという気持ちは両者(富士フイルムHDと米ゼロックス)にあった」と古森会長。だが、米ゼロックスの時価総額は現在約9000億円。ここにプレミアムを乗せてTOB(株式公開買い付け)などを実行しようとすれば、巨額の資金が必要になる。
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