富士フイルムが名門ゼロックスを買えた理由 古森会長「当社グループとして現金流出ない」
今回のスキームはこうだ。まず富士ゼロックスが金融機関から6710億円を借り入れ、富士フイルムHDから75%の自社株を取得する(第三者の専門家により富士ゼロックスの企業価値を約9000億円と算定)。この時点で富士ゼロックスは、米ゼロックスの100%子会社となる。
富士フイルムHDはこの資金を米ゼロックスの50.1%分の新株発行引き受けの原資とする。だが米ゼロックスの時価総額を考えると、富士フイルムHDの原資では足りない。そこで米ゼロックスは既存株主に対して25億ドル(約2700億円)の特別配当を実施することで、自社の時価を下げる。新株発行が完了すれば、これを元手に富士ゼロックスは最初に借り入れた6710億円を返済でき、現金流出はない、という仕組みだ。
統合を含めた協議が始まったのは、1年半ほど前だという。「2年ほど前に就任した(米ゼロックスの)ジェフ・ジェイコブソンCEOは富士ゼロックスの取締役でもあったのでよく日本に来ていた。何かいい方法がないか話す中で、今回のスキームにたどり着いた」(古森会長)。
”物言う株主”の声も引き金か
だが、このタイミングでの米ゼロックス買収実現の理由に関しては、別の見方もできる。”物言う株主”による圧力だ。昨年12月以降、米著名投資家のカール・アイカーン氏が、収益の減少が止まらず株価も低迷する米ゼロックスへの対決姿勢を強めていたからだ。
米ゼロックスの筆頭株主である同氏は、1月22日に第3位株主のダーウィン・ディーソン氏との共同声明を発表。「富士ゼロックスとの合弁解消」など、5つの要求を会社側に通知していた。今回の富士フイルムHDの発表は、それからわずか9日後である。
古森会長は「今回の統合にはさまざまなメリットがある。株価も自然に上がる。アクティビストたちもおとなしくなるでしょう」と意に介さない。
統合後の新・富士ゼロックスにおける経費削減効果は、2022年度までに年間17億ドル(約1870億円)を見込む。そのうち4.5億ドル(約500億円)は国内外で1万人削減計画を打ち出した現・富士ゼロックスの構造改革によるものだ。
とはいえ、世界のコピー機・複合機市場は先進国を中心に頭打ち。さらに富士ゼロックスの不適切会計問題が昨年発覚したばかりで、巨大な米ゼロックスをどこまでコントロールできるかは未知数だ。ニューヨーク上場を維持することで、株主との慎重な対話も求められそうだ。
記者会見に登壇した古森会長ら経営陣は一様に満足げな表情を見せたが、この先の企業統治には課題が山積している。
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