富士フイルム「プロジェクター市場」参入のわけ デジタルアートやプラネタリウムに商機
プロジェクターの世界市場規模は年間約800万台とされ、「この数年、市場はまったく伸びていない」(台湾のプロジェクターメーカー関係者)という。すでにプロジェクターを置いている会議場やオフィスでの買い替え需要がほとんどで、新規の顧客が少ない。
機器の価格も下落し続けている。世界の販売シェアトップは3割強を占めるセイコーエプソンだが、パナソニックやキヤノン、カシオ計算機、リコーなどの日本勢のほか、近年はベンキューやオプトマ、ヴィヴィテックなど台湾企業が同レベルの機種で日本勢の2割ほど安い価格で展開している。
「技術力や既存の顧客へのアフターサービスで日本勢には強みがある」(日本の大手メーカー幹部)との声もあるが、技術力の差も縮まりつつある。アメリカの市場調査機関PMAリサーチによると、2018年に4Kプロジェクターの世界シェアでトップだったのは台湾のオプトマだった。「高級機種は日本企業」という構図はプロジェクター市場でも崩れつつある。
狙うのは「空間表現」や「演出」用
プロジェクター市場に参入する意義について、富士フイルム光学・電子映像事業部の飯田年久事業部長は「会議室など、一般的にプロジェクターの使用が想定される市場に参入するつもりはない」と話す。富士フイルムの狙いは、空間表現や演出に特化したプロジェクターだ。
プロジェクターが空間表現に使用された代表的な例が、東京・お台場に開館したデジタルアート専門の美術館「チームラボボーダレス」だ。デジタルアート制作会社のチームラボによるもので、セイコーエプソンがプロジェクター機器を提供。2018年6月の開館からわずか5カ月で来場者が100万人を突破する人気施設となり、プロジェクターの潜在力を見せつけた。
プラネタリウムでもプロジェクターは重宝されている。2018年12月にコニカミノルタが有楽町に開館した「プラネタリアTOKYO」では、プラネタリウムの2つのドームにそれぞれパナソニック製のプロジェクターが導入されている。空間表現向けプロジェクターの可能性が広まり、富士フイルムはそこに商機を見出そうとしている。
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