富士フイルム「プロジェクター市場」参入のわけ デジタルアートやプラネタリウムに商機
この4月、富士フイルムホールディングスが成長を見込みづらい成熟市場へ新たに参入した。
参入したのは、画像や映像を大型スクリーンに投影する装置であるプロジェクター市場。新製品「FUJIFILM PROJECTOR Z5000」(Z5000)を披露した2月の記者会見には同社の助野健児社長が参加し、「富士フイルムはいつの時代も挑戦することで未来を切り開いてきた」と自信を示した。
このタイミングでの参入に疑問の声
今回富士フイルムが投入するZ5000には「屈曲型二軸回転機構レンズ」と呼ばれる世界初の機能を盛り込んだ。上下、前後、左右の全方位にレンズを動かせるため、本体を動かさずにレンズの回転だけで投影の向きを変えられる。
富士フイルムはこれまで、光学事業の一環としてプロジェクター向けのレンズを生産し、プロジェクターメーカーに供給してきた。しかし、今回は自ら完成品を手がけることを決めた。
単に部品を供給するよりも完成品を生産した方が付加価値もつき、利益を得る可能性は高い。しかし、「富士フイルムがどんなに高い技術力を持っていようが、競争が激しいプロジェクター市場にわざわざ新規参入する理由は見当たらない」(大手国内証券アナリスト)というように、市場の評価はいま一つだ。
富士フイルムの業績は、2019年3月期に連結営業利益2098億円と最高益を達成し、2020年3月期は前期比14.4%増の2400億円と連続最高益を目指している。レッドオーシャンであるプロジェクター市場にわざわざ出なくともよいのではないかという疑問が出ても無理はない。
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