テレビで生き残るのは2~3社 氏家齊一郎・日本テレビ放送網取締役会議長に聞く

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縮小

――既存業界の寡占が進展する中でも、消費者金融やパチンコなど新しい産業が次々に大きな広告主になってきた歴史があります。

確かに、新しい産業は出てくるが、寡占化の進展が速い。上位1、2社で寡占するような状況になれば、もうマスの広告は必要なくなる。もちろん広告機能が完全になくなることはありえない。トヨタさんだって、新車を発売する場合、とりあえずマスで市場に告知するだろう。それは変わらないが、量が減っていく。

――国内市場の縮小もあり、トヨタのようなグローバル企業は海外での広告を増やしてきました。

新興国では、まだ自由に競争をやれる。自由な競争にはマス広告が大きな効果を持つ。海外で広告宣伝を増やすのは、自然な経営判断だろう。

上位2~3社しか食っていけなくなる

――3年前の時点で構造変化を感じたのはなぜでしょうか。

日本テレビは1993年から2003年まで、視聴率の四冠王をとってきた。その当時は、まだ四冠王をとれば広告収入は大きく伸びていった。ところがその後、トップになったフジテレビの売り上げを見るとトップであってもほとんど伸びない。07年、08年になると、トップにもかかわらず、落ちてきているんだ。今までは四冠王をとったところは、必ずプラス成長できたが、これを見て構造変化が起きていると感じた。

――今期の業績を見ると、テレビ以上に新聞の広告収入の減少が激しくなっています。

新聞は完全に需要が頭打ちで、発行部数の減少が続いている。そのため、広告収入はずっと減少してきていた。私は30年ほど前に7年ほど読売新聞社の広告担当常務をやっていたが、その頃は販売収入と広告収入の比率が5対5でほぼ同じだった。ところが、今は販売収入が7に対し、広告が3になっている。購読料を値上げしていく中で、新聞広告がテレビに食われていったためだ。

広告収入への依存度は3割に下がったとはいえ、新聞の経営は広告収入に非常に影響を受けている。広告が急減してしまえば、経営は非常に厳しくなる。特に部数の少ない全国紙のうち一つ二つは経営が困難になるかもしれない。

テレビも同じ。トータルのパイが少なくなってきている中でも、たとえば日本テレビがどこかとくっついて5局体制を4局体制にするということは、マスコミ集中排除原則により、法律的にできない。それができれば、割合にいろいろな手があるけれども、これはまったくできない。

そうすると、少なくなったものを5局で分けていかなくてはいけない。しかし、全体を潤すわけにいかないぐらいの需要になってくれば、上位2~3社しか食っていけなくなるだろう。

トップカンパニー、セカンドカンパニーになるには、いかに支持率の高いコンテンツをつくるかに尽きる。しかも、これからは限られた予算の中で優れたコンテンツをつくっていく、そうしたディレクターの能力が問われる。経験則からいって、制作費1000億円と500億円の勝負なら、確実に1000億円が勝つ。しかし、1100億円と1000億円の勝負であれば、知恵を絞れば1000億円でも勝つことができる。これからは、そういう勝負をしていかなければいけない。

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