2025年「黒子化する」銀行が生き残る5つの条件 もう一度「ワクワクする」就職先に変わる方法

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このように、金融サービスは、消費者が目的実現に向かう行動の中で、必要とする場所に適切なタイミングで登場し、検討と手続きにアタマと労力を使う必要のないサービスを提供するという方向に向かうものと考えられる。つまり、金融サービスは顧客の行動過程(カスタマージャーニー)の中に埋め込まれて黒子化するのだ。

金融サービスは目的ではなく手段であり、手段である限りはそれに要するフリクション(手間/コスト/心理的負担など)が少ないことが望ましいからだ。

商品・サービスよりも顧客経験

一方で現在、銀行の自動車ローンを利用するとしたらどうだろうか。多くの場合、申し込みのためには平日の営業時間内に銀行の支店を訪れる必要がある。

所得証明書類と見積書の持参も必要だ。最近はインターネットでも申し込み可能だが、申し込み後のプロセスは同じだ。ディーラーの提携ローンと比べると、銀行の自動車ローンは、現在でも顧客の自動車購買のカスタマージャーニー上にうまく乗れていない。

つまり、顧客が「銀行の自動車ローン」を何かの機会に認知してくれない限り、選択肢の中には入りにくいのだ。

ここで重要なのは「顧客経験」、つまり提供者との接点を通じて顧客が経験する心理・感情面の価値だ。

商品・サービスは、顧客経験の中の単なる1つの要素であり、全体として顧客のフリクションを最小化する一方で、付加価値を最大化しなければならない。顧客経験が向かうべき未来であるなら、支店やウェブサイトに商品・サービスを並べて顧客の訪問を待つという現在の銀行のやり方は、明らかに的外れだ。

あまりよくない例えで恐縮だが、魚を捕るために魚の通り道に網を仕掛けるのでなく、自分のいる場所で釣り糸を垂れて待つようなものだ。

さらに、支店で推奨される商品やサービスは基本的にはその銀行のものであり、実質的に他の選択肢はない。

銀行の担当者のほうが関連分野の知識や情報が多い(「情報の非対称性」と言われる)ことから、結果として銀行にとって都合のよい商品を選ばされてしまう可能性もある。誘導されることへの警戒感から、銀行の窓口での相談をためらう人もいる。

前述の近未来で述べたような世界では、個人向けのAIが実現されている可能性が高い。映画『her/世界でひとつの彼女』には、こうしたAIが登場する。専用のAIが、主人の好みや行動に合った情報収集、注意喚起、情報提供、提案をしてくれて、その先の手続きや処理も行ってくれる。

AIの情報量は銀行窓口の担当者を上回るから、情報の非対称性は解消するどころか逆転してしまうかもしれない。顧客を誘導しようとしても不可能になるのだ。

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