2025年「黒子化する」銀行が生き残る5つの条件 もう一度「ワクワクする」就職先に変わる方法

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現実に誰が個人向けAIを提供するかについては議論の余地があるが、それに向かう最前線を走るのは、アマゾン(アレクサ)、アップル(シリ)、マイクロソフト(コルタナ)といった、個人AIの候補となるエージェントを有する大手テクノロジー企業だろう。

これらの企業は、銀行とは比べものにならない規模でAIに投資を行っている。アリババを筆頭とする中国のテクノロジー企業も大規模な投資と人材の集中を進めている。それが未来を制すると考えているからだ。

ゼロベースで立ち位置を見直す

冒頭に述べたような、ウォレットが銀行の個人口座の競争相手になる時代は、それよりも早くやってくる可能性が高い。

ウォレットが個人の主な給与振込先になるなら、銀行には顧客の利用データが入らなくなり、現在の給与振込口座をベースとした顧客の固定化やクロスセル戦略も通用しなくなる。

さらにその先の未来が、消費者とのやり取りの最前線をテクノロジー企業が支配し、情報の非対称性における優位性が消滅するものであるなら、銀行はどこで生き残ることになるだろうか?

マーケティング論の授業の導入部では、「マーケティング近視眼」について語られることが多い。自らの事業領域を近視眼的に狭く定義してそれに固執したがために、より大きな環境の変化を見逃して時代に取り残されてしまうことだ。

その古典的事例として、アメリカの鉄道業が挙げられる。自らの事業領域を「鉄道輸送」に限定してしまったため、自動車や航空機の時代が訪れたことに適応できずに衰退してしまったのだ。

多くの日本の銀行は、業態としての信頼性が高いことや、支店という顧客接点を有することを自らの強みと考えている。

しかし、デジタル化の大波の中では、あらゆるビジネスの組み換えが急速に進む。バンキングも、顧客の世界に組み込まれて、必要な時と場所でその機能を提供する方向へと進むだろう。銀行が現在のものと大きく異なる姿をしている可能性は大きい。「未来の銀行」が「いまの銀行の未来」であるかはわからないのだ。

その中で生き残るためには、商品・サービスや支店ではなく顧客を中心に据え、「第一原理思考」つまりゼロベースで考えて、自らの立ち位置を定義し直さなければならない。自らの強みについても、その本質まで立ち返ってみるべきだろう。

その立ち位置を急速な環境変化の中で実現するためには、失敗から学び、試行錯誤を高速で繰り返して成功に近づけていくことが求められる。テクノロジー大手企業やフィンテック企業はそれを行っている。

しかし、現在の銀行の文化は失敗を怖れる傾向が強い。組織と思考と行動は、過去や先例を前提とすることに慣れている。だからこそ、組織文化の変革は必須であり、それはトップ自らが主導して行うべきものだ。

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