タイガー優勝の「マスターズ」熱狂させる舞台裏 マスターズ委員会の筋書きのないドラマ演出
2019年のゴルフのマスターズ最終日(4月15日=日本時間)、18番グリーン周りは数千のパトロンで埋め尽くされていた。18番ホールにはパトロンが見やすいように、巨大なスコアボード(約横12m、高さ6m)が常設されている。このボードはデジタル時代にもかかわらず、人力でスコアを裏から入れ替える、完全手動のアナログ式だ。古い野球場にある、あのスコアボードをイメージしてもらえればよい。
18番に陣取るパトロンは、試合の展開はそのボードに頼るしかない。最近のトーナメントでは、スマホを持ち込むことができ、大きなデジタルスクリーンで逐次ほかの選手の状況がわかるが、マスターズはスマホ持ち込み厳禁だ。
持ち込みが発覚すれば、大会から永久追放されるので、誰も持ち込んでいない。情報はそのボードと、オーガスタに響きわたるパトロンの歓声から想像していくしかない。
最終日、18番のスコアボードには最終組のフランチェスコ・モリナリ、トニー・フィナウ、タイガー・ウッズの順でボードに掲示されていた。スコアがよくなってもよほどのことがない限り、その順番は変えない。作業が大変だからである。
地響きするような大歓声に包まれた18番グリーン
遠くから大きな歓声が聞こえてくる。タイガーがバーディか?と思ってもスコアボードはすぐには変わらない。数分経って、スコアボードを人が動かし始める。各選手の15番スコアが表示される。15番はロングホールでバーディ、イーグルチャンスがある。14番までタイガーと同スコアで首位タイのモリナリのスコアが(赤字で)12⇒10に変わると、どよめきが起こった。
フィナウは9⇒10、いよいよタイガーが12⇒13と表示が変わった瞬間、パトロンが総立ちとなり拍手喝采と叫び声がコース全体に響き渡った。タイガーがついにリードした。また、遠くから大きな歓声が聞こえる。しばらくして、16番のスコアを動かし始める。モリナリ10のまま。フィナウ10⇒11にスコアを伸ばす。
次に、タイガーのスコアボードを動かす前に、パトロンから願いの叫び「14フォーティーン!!」の声が。ボードが変わり14と表示。18番グリーンが地響きするような大歓声に包まれた。パトロンがタイガーの勝利を確信した瞬間である。
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