タイガー優勝の「マスターズ」熱狂させる舞台裏 マスターズ委員会の筋書きのないドラマ演出
18番に最終組が上がってきた。最後にタイガーが勝利のための30cmパットを入れた瞬間、18番グリーンはパトロン総立ちの大歓声、さらにタイガーコールが起こり、1分以上に渡り響きわたった。誰もが満面の笑みを浮かべ、タイガーの優勝を祝った。14年ぶり5回目のマスターズの優勝であった。
アナログ式のスコアボードは想像力をかきたて、情報不足による不安と期待でさらに18番ホールは盛り上がり熱狂する。すぐにわからないことが、逆に今の時代にスポーツ観戦の面白さを演出している。情報不足からくる不安と期待の反動として、状況を理解できた瞬間に一気に沸騰する。会場にいるパトロンをマスターズという大舞台の大事な役者に仕立てる。
だからこそ、タイガーが優勝パットを決めた瞬間の地響きのする歓声、タイガーコールが起こるのである。
この熱狂があるから、選手も興奮しタイガーの雄たけびが生まれる。会場の熱気は、数億人のテレビや、タブレットやスマホの視聴者にも伝わる。
マスターズの興奮はマスターズの価値を高める。
大会を主催するマスターズ委員会は、そこまで考えて、アナログ式のスコアボードやスマホ持ち込み禁止にこだわっているのではないだろうか。
マスターズ委員会の緻密な情報戦略
この会場の熱気を世界にどう伝えるか、情報発信に関しての戦略が見えてくるものがある。その1つが、3年前に建てられて工事費が約50億円かかったと言われているプレス・ビルディングである。
今後50年間、デジタル時代に対応できるとの触れ込みだ。
情報時代にふさわしく、各種情報が与えられた各メディアの個人席に2台のディスプレーが備え付けられ、逐次情報や各ホールのライブ放送を自由に切り替えて見ることができる。
各メディアはその情報を活用して、マスターズの情報をリアルタイムで世界に発信できる。それを象徴するのが、マスターズ委員会が発信するmasters.comだ。このサイトを見れば、会場にいなくても戦況が逐一わかり、会場の熱狂を世界中のどこにいてもリアルタイムで共有できる。
さらに、マスターズ委員会のフレッド・リドレー会長が大会期間中に、オーガスタ・ナショナルGCに隣接する広大な私有地に数年かけて国際放送センター(Global Broadcast Village)の建物を建築することを発表した。
この土地は、地域の主要幹線であるワシントンロードを挟んでいるため、数週間後にはオーガスタ・ナショナルGCとの間にトンネル工事をして、交通遮断なく行き来できるようにする計画を発表した。
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