アメリカは「神の国」行きの巨大な列車だ 宗教的幻想と技術革新が生む「SF的現実世界」

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社会主義国の首都、例えば平壌などは、映画のオープンセットか、テーマパークとしか形容しえない。金日成の公邸として建設された「錦繡山(クムスサン)太陽宮殿」(現在は金日成と金正日の霊廟)は、ホワイトハウスとベルサイユ宮殿の混ぜ合わせと言われる。ついでに平壌には、パリをしのぐ世界最大の凱旋門もつくられた。

のみならず金日成は、超能力が使えたことになっている。千里の道を歩くときも、「縮地法」という技で100分の1ぐらいに縮め、あっという間に移動したとか。向こうではこれが真実、ないし「コンセンサス・リアリティ」なのだ。

魔術的思考の支配から脱却できるのか

日本もどこまで人のことを言えるだろうか。拙著『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』で論じたとおり、戦後平和主義にも魔術的思考の特徴がうかがわれる。戦争さえ放棄して、軍事力を持たずにいれば、日本は永遠に平和で、繁栄も享受できることになっているではないか。しかも少なからぬ国民は、これが合理的な発想だと信じている。

魔術的思考は、テクノロジー重視の姿勢と何ら矛盾しない。イギリスのSF 作家、アーサー・C・クラークが喝破したように、「十分に発達したテクノロジーは魔法と区別がつかない」のである。

科学(サイエンス)と違い、テクノロジーを利用するうえで、そのメカニズムを理解している必要はない。使い方を知っていればいいのだ。そして「仕組みはわからないが、正しく使えば思いどおりの結果をもたらす技」とは、つまり魔法にほかならない。

本書からわれわれが読み取るべき教訓は、近代においても人間は、宗教的幻想や魔術的思考を脱却したわけではないことである。否、テクノロジーの進歩は、かえってそれらを強化する恐れが強い。21世紀の世界が方向性を見失っているように感じられるのも、魔術的思考の支配が完成しつつあるためかもしれないのだ。

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