東芝の車谷会長兼CEOに就任1年で見えた光景

「偉い人」を輩出してきた巨艦はどこへ向かう

銀行マンの経歴を持つ東芝の車谷暢昭会長兼CEO(撮影:今井 康一)

「企業広報賞」と歴史の皮肉

経団連の考えや取り組み、日本の企業や業界が社会に役立っている姿を発信することを目的とする「経済広報センター」なる一般財団法人がある。

同センターは、毎年、「企業広報賞」を授賞している。その一部門賞として、企業広報における最優秀企業に与えているのが「企業広報大賞」。ちなみに、2013年度は、日産自動車がカルロス・ゴーン氏(元CEO)を前面に打ち出す広報姿勢が高く評価され同賞を受賞した。その5年前の2008年度に同賞を受賞したのは、後に経営危機に陥いる東芝である。

西田厚聰氏が社長(2005~2009年)を務め、岡村正・前社長時代が事業整理により、財務体質を改善していたことを受け、銀座の東芝ビルや東芝EMIを売却する一方で、原子炉技術大手のアメリカのウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(WEC)を54億ドル(当時・約6210億円)で買収を決定するなど、2006年度からの3年間で2兆4000億円の投資計画を発表した。「強いリーダー」としての評価が最高潮に達していた頃だ。

ところが、2008年9月リーマン・ショック(世界的金融危機)に見舞われただけでなく、2011年3月11日に起こった東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電の世界的需要が低迷し、業績の足を引っ張る結果となってしまった。

西田氏退任後の2016年3月期、WECを中心とした原子力事業で約2500億円の減損損失が計上された。同社が2015年末にアメリカのシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン(CB&I)から買収したアメリカの原子力サービス会社ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)の資産価値が想定額を大幅に下回り、2017年3月期に経営破綻した。この結果、東芝は債務超過に陥り、半導体メモリーや医療機器などの柱となっていた利益部門の売却を迫られることになった。

さらに、不正な会計処理が表面化し、西田氏も関わっていたとの疑いがかけられ、カルロス・ゴーン氏と同様、「強いトップ」から「晩節を汚した経営者」へと評価は逆転した。

奇しくも、「企業広報賞」のうち社内外にわたり、優秀なトップ広報を実践した経営者(個人)に贈られる「企業広報経営者賞」を受賞したのは、台湾・鴻海傘下に入る前のシャープを再生できず、無念を晴らす格好で日本電産副会長に転じた片岡幹雄・元社長兼COOと日本航空(JAL)を経営破綻させた西松遙・元社長の2人である。まさに、「歴史の皮肉」と言えよう。

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