令和時代に「金融の覇者」になるのはどこなのか 「中国型」のビッグデータ利用は認めてよい?

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これに対して、金融機関は、(1)資産の預かり残高を拡大して残高に対するフィーで稼ぐ、(2)アドバイスやコンサルティングで稼ぐ、という方向を目指しているように見える。

人間によるアドバイスに対する需要はしばらくの間はあるはずなので、こうした路線はある程度の成果を上げそうだ。しかし、技術の進歩を考えると、遠からず、(1)残高にかかるフィー水準の競争、(2)AI的技術によるアドバイスの機械への置き換え、の両方が進むはずなので、新技術による「残高フィー」、「アドバイス料」両方の価格破壊が進むと見るのが妥当だろう。

株式の売買手数料に対して起こったのと同様の変化が、金融のあらゆる商品・サービスに対して起こるはずだ。その変化に適応できた者が、令和の時代の主な金融プレーヤーになるはずだ。

データを握るのは誰か?

金融は元々お金の流れと共に情報を処理するビジネスだ。モノを直接生産するわけではないが、お金の流れを通じた情報処理で資源配分を効率化して生産に貢献する。例えば、銀行は口座のお金の流れのデータから他人よりも正確な与信判断が出来ることが強みのビジネスだった。

ところが、令和の時代に入った今の状況を見ると、金融業はデータにお
ける優位を急激に失いつつある。例えば「Amazonが銀行業免許の申請をしたらどうなるか?」という問が頻繁に聞かれるが、「Amazon」の部分をグーグル、アップル、フェイスブックといった企業に変えてもあまり違和感はない。あるいは現在覇権を巡って鎬を削っているキャッシュレス決済分野で勝ち残った業者などが、金融サービスを提供することを考えると、融資についても資産運用やコンサルティングについても、現在の銀行や証券会社よりも強力なデータを持ち得るように思われる。

例えば、個人のリアルな店舗の購買行動を個人名、位置情報、決済の状況などと共に把握することができると、個人に対する評価とマーケティングは、現在の銀行に可能なレベルの遙かに上を行くにちがいない。一方、銀行は決済業者と個人の帳尻を決済するだけで、個人の行動に関する情報を持てない。金融ビジネスの主なプレーヤーは、案外短期間で大きく入れ替わるのではないだろうか。当面は、キャッシュレス決済で誰が覇権を握って、データを保有するようになるのかに注目したい。

ところで、大きなデータを元にした新しい金融ビジネスは、非常に強力なマーケティング能力を持つはずだ。個人の金融行動は、趣味嗜好や性格などと共に、「新しい金融機関」によって丸裸の状態で把握されるだろう。

こうした動きに対して、欧州のように個人情報の権利を強化して情報の利用を規制する方向を選ぶのか、中国のように情報の利用に関する規制をむしろ緩和してビッグデータのビジネス利用を促すのかが問題になる。アメリカは中国寄りの路線に見えるが、中国は政府の後押しもあって、データのビジネス利用に関してすでにアメリカの先を行っているように見える。

この問いに対する筆者の目下の答えは、「中国型+消費者権利の強化」だ。データ利用の拡大は止めようがないし、有効に規制することが不可能だろう。加えて、データ処理ビジネスに制約を加えると経済は活性化しない。

データは広く自由に利用させる一方で、(1)使用するデータと利用方法について企業に厳しく開示させる、(2)買った金融商品の返品などに関して消費者の権利を強化する、(3)金融商品のマーケティングに対する警戒的な啓蒙を広く行う、(4)マーケティングに対抗するビジネスを育成するなど、個人が「新しい金融ビジネス」のカモにならないような「金融マーケティングに対する対抗的力」を養うことが、令和の時代の金融行政には求められるのではないだろうか(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページここからは競馬コーナー。NHKマイルカップにあの馬が!
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