「バブルの怪人」と債権回収人の死闘にみる教訓

『トッカイ』で清武氏が描きたかったこと

――清武さんもそこに惹かれるものがある。

それはもう、強く。『石つぶて』や『しんがり』の主人公と重なるものを感じる。

――本書には、末野謙一と西山正彦という、2人の「ヒール役」が出てきます。住専の「悪役」候補はほかにもいたと思うのですが、なぜこの2人だったのですか。

やはりこの2人が興味深い人間だからですよ。どこまで範囲を拡げようか考えたのだが、西山氏に対する回収がいま現在進んでおり、やはりこの人を取り上げざるをえなかった。末野氏も裁判を起こされて、(数千億円もの借金の)追及をいま現在受けている。

悪魔のような人間的魅力を持つ「借金王」

寝ていたら、毎日何億円か借金が増えているというのに、本人にはまったく自覚がない。堂々と生きている。例えば、住専の社長の中には彼にものすごく惹かれた人間もいる。「末野が大好きだ」と。僕はその話を聞いて、悪魔的な魅力のある人だなと思った。

前科などは別にして、人間的な魅力のある人はいると思う。そういう人間の懐に飛び込んで、話を聞いてみたいという気持ちがある。人間を悪人とか善人で片づけるのは簡単だけど、人間にはいろんなプリズムがある。そういうことを書くのが僕らの仕事だと思うし、一生懸命やってきた男たちにもう一度スポットライトを浴びせてみたい。

――『トッカイ』のみならず、清武さんの本は当時の場面がリアルに再現されていますね。

僕がいちばん心がけているのは会話の復元。人間は今話したことも忘れるんだけど(笑)、いろんな人に聞いて、あのときあなたは何と言いました?彼は何と言いました、と。法廷の記録など、いろんなものを取り寄せて、重層的に会話を復元する。場合によっては本人に見せる。

もう1つは資料をたくさん集めること。僕は資料を集めるのが好きで、そのために(執筆に)時間がかかるということもある。

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