ネット仮想通貨「ビットコイン」は安全か コストは誰かが負担しなければならない

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さて、ビットコインの将来はどうなのか? 正直なところ、仕組みが完全に理解できたわけではないのでわからない。海外送金などの決済システムとして可能性があることは先にも述べたが、ビットコインの価値が普通のおカネに比べて大きく変動しそうであることは間違いないだろう。価値変動のリスクが大きいことで大儲けする人も出てくるはずだが、平均して参加者全員が利益を得るのでなければ、ギャンブルのようなものということになってしまう。

無料の昼飯なのか?

わからないことはもうひとつある。ビットコインのシステムを維持するためのコストである。ビットコインが発行上限に達するまでは、新しいコインの創造がコストを賄うインセンティブになるが、上限に達した後はビットコインの価値が傾向的に増加し続けないとコストが賄えないように思える。経済学の基本のキは「世の中に無料の昼飯はない」(誰かがコストを負担している)という原則だが、ビットコインがこの原則に従いながらどうやって維持コストを賄っていくのかが理解できない。

ビットコインを「交換の媒介」や「価値の保蔵」という機能から考えたときの最大の問題は、価値が不安定なことだろう。価値の変動が大きいということは、逆にリスクは大きいが利益も大きいと考えて利用する人を生んでいる。これが投資なのか投機なのかは、今の時点では評価が分かれるに違いない。

筆者は保険会社のエコノミストだから、当然のことながら危険回避型の人間である。今から参加すれば大きな利益が得られるかもしれないが、リスクが評価できないことには手を出さない主義だ。本当にビットコインが利便性の高い有用なものならば、いずれ社会に定着するだろうから、そのときに利用者になれば、利便性という十分な利益が得られると思っている。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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