日本銀行の量的・質的金融緩和政策は「期待に働きかける」政策であると言われる。今年4月にこの政策が導入された際、日銀が発表した「『量的・質的緩和』の導入について」では、「市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる」と述べられている。日銀がインフレターゲットを設定し、目標を達成するために、あらゆる手段を使って積極的に金融緩和を進めていけば、物価が上昇するという期待が高まっていくと説明されている。
期待という用語は、expectationの訳だが、日本語の「期待」には願望というニュアンスがあって、どうもしっくりこない。数学でも確率論で「期待値」という言い方をするので、経済学だけの使い方ではないのだが、言葉が混乱を招いていることは否定できない。日本銀行の黒田東彦総裁のいう「期待」とは、単なる願望ではなくて、「予想」である。「期待を転換させる」とは人々の「予想が変わるはずだ」という主張である。2年間程度で2%の物価上昇率を達成できるかどうかは、人々の物価に対する予想を変えることができるか、が重要なポイントのひとつだ。
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