中央銀行は期待をコントロールできるのか いつどこで人々の心理が変わるのかは、わからない

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人々の予想には、過去の経験だけではなく、政府や中央銀行の政策変更の影響を織り込もうとするなど合理的な部分もある一方で、将来の予測が過去の経験に引きずられるという非合理的な側面もある。ファッションの流行やブームは予想もしなかったところで始まり、突然、終わってしまう。人々の心理を自在にコントロールできないことは言うまでもないが、心理の動きを的確に予測することも容易なことではない。

量的・質的金融緩和は、これまでのデフレ下では効果が弱かったが、ひとたび物価が上昇し始めると、突然、効果が強くなるという心配もある。量的・質的緩和の問題点は、デフレ心理を変えることができないということではなく、いつどこで心理が変わるのか予想することが困難で、デフレ心理が変わったときに対応が難しいということにあると考えられる。期待を変えるために大量に供給した資金を、ひとたび物価が上昇してインフレ心理に変わったときに、金融市場や経済を混乱させずに機敏に吸収することは、そうとう困難な仕事になるだろう。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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