人々の予想には、過去の経験だけではなく、政府や中央銀行の政策変更の影響を織り込もうとするなど合理的な部分もある一方で、将来の予測が過去の経験に引きずられるという非合理的な側面もある。ファッションの流行やブームは予想もしなかったところで始まり、突然、終わってしまう。人々の心理を自在にコントロールできないことは言うまでもないが、心理の動きを的確に予測することも容易なことではない。
量的・質的金融緩和は、これまでのデフレ下では効果が弱かったが、ひとたび物価が上昇し始めると、突然、効果が強くなるという心配もある。量的・質的緩和の問題点は、デフレ心理を変えることができないということではなく、いつどこで心理が変わるのか予想することが困難で、デフレ心理が変わったときに対応が難しいということにあると考えられる。期待を変えるために大量に供給した資金を、ひとたび物価が上昇してインフレ心理に変わったときに、金融市場や経済を混乱させずに機敏に吸収することは、そうとう困難な仕事になるだろう。
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