ビットコインの取引を不正や誤りなく記録するためのコンピュータの作業に参加すると、運がよければ新たなビットコインが手に入るという仕組みのようだが、これは、金のように、発見した人が利益を手に入れるという比喩で説明されている。ビットコインのシステムを維持するための計算作業を参加者が行うことに対する対価は、新たなビットコインを作り出すことで賄われているということになるだろう。ビットコインの通貨発行益(seigniorage)で、システムを維持していることになる。
おカネによる取引を安全で確実なものとして維持し続けるためには、実は多くの費用がかかっている。たとえば、紙幣は時間が経つと精巧な偽札が必ず登場するので、時々、新しいデザインに切り替えられる。ビットコインの暗号化技術は高度なものだと言われているが、時間が経てば、これを打ち破る技術が出てこないとは限らないだろう。ビットコインは政府の関与がないことが一部の人たちからは評価されている。これは逆に言えば、詐欺や盗難など何か問題が起きたときに、誰か対処してくれるのかわからないということでもある。
ビットコインの信用創造が拡大したら・・・
おカネを創造できるのは中央銀行だけではないということは、金融論の教科書の最初に出てくる話だ。たとえば日本の円では、日銀券や財務省が発行している硬貨など形のあるおカネは全体のごく一部でしかない。日本国内にあるおカネの残高は、マネーストックと呼ばれ、代表的指標はM2だ。M2は2013年11月末で854.8兆円だが、日本銀行が供給したおカネであるマネタリーベースの残高は190兆円だけ、日銀券の発行高は84兆円にすぎない。銀行が貸し出しを行うことによって日本経済で流通しているおカネの量は、そこから大きく膨張している。
ビットコインにも普通のおカネと同じように貸し借りをするサイトがあるようだ。今のところあまり利用されていないようだが、貸し借りのサイトが人々の信頼を得るようになり、拡大していけば、ビットコインの流通量の管理は極めて難しくなる。もともとのビットコインの発行量は限られていても、実際に世界中で使われるビットコインは貸し借りで大きく膨張する可能性がある。
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