日清製粉、パンの本場で見せた粉へのこだわり 海外の和食ブームも追い風、増産にアクセル

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日清製粉グループは2012年に買収したアメリカのミラー・ミリング社でも、日本流の多種類生産や顧客ニーズに合わせた提案営業を展開した。ミラー・ミリング買収当時は全米9位。その後、4工場を追加取得したこともあって、現在では全米4位に浮上している。日清製粉グループ自身も世界で第6位の製粉会社になっている。欧米で展開している製粉会社に絞ると、アメリカの穀物メジャー系2社に次ぐ、第3位の規模に成長した。

そしてこれから日清製粉グループが新たな成長市場として見据えているのがインドだ。インドはもともとイギリスの植民地だったこともあり、北半分は小麦の文化圏。ただ工場で生産された小麦粉とパンはさほど普及していない。都市部でなく地方では、「チャパティ」という、発酵させないパンを家庭で焼いて食べている人が多い。

インドでも工業化の進展に伴い、パン食のニーズは広がりつつある。とはいえ小麦粉を膨らませるイーストの供給不足が深刻化している。インド政府の環境規制によって、現在、インド国内にある既存のイースト工場は増産が難しい。

日清製粉グループには、OYインド(オリエンタル・イースト・インド)という会社があるが、「事業内容はバイオなのに、社名にイーストが入っているため、イーストを売ってほしいという問い合わせがくる」(小池取締役)状態だ。

インドではイースト工場の設備投資を増強

インドにおけるイースト需要は十分とみて、日清製粉グループでは、イーストの新工場建設を決めた。現地の厳しい環境規制に対応するため、新工場では排水ゼロとし、工場内で水を循環させる仕組みを取り入れる。

投資額は157億円、完成時期は2020年夏を見込む。完成後は生イーストベースで日産100t生産する。これまでボトルネックとなっていたイーストの供給量が増えれば、インド国内でパン工場も増加・増産が可能になるであろう。つれて、パン工場で使う高品質の小麦粉需要も、一気に増える可能性が出てくる。

「まだ具体的な話はないが、インド市場はターゲットになると考えている」と小池取締役も含みを持たせる。将来、日清製粉グループがインドでも小麦粉生産を開始する日がくれば、小麦粉の海外比率はもう一段高まることになりそうだ。

広瀬 泰之 東洋経済 記者

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ひろせ やすゆき / Yasuyuki Hirose

経営コンサル、書店などの業界を担当。『会社四季報』編集長を経て、現職は同・編集部長

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