日清製粉、パンの本場で見せた粉へのこだわり 海外の和食ブームも追い風、増産にアクセル

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東京・神田錦町の日清製粉グループ本社。1998年、日清製粉グループが入居する前は、キッコーマンが本社を構えていた。「しょうゆ色だったビルの外壁が小麦粉色に変わった」(関係者)と言われる(撮影:尾形文繁)

日清製粉グループの海外事業は、買収に次ぐ買収によって成長してきた。カナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリアで、現地企業の買収と工場取得を繰り返してきたのである。これらの国は言わずと知れた世界的な小麦生産地で、いわば小麦文化の本場。そこにどうやって日本の製粉会社が乗り込んでいったのか。

実はそのカギは、身近なところにあった。日清製粉グループが製粉事業で初めて海外進出したのは、1989年、カナダ西海岸にあるロジャーズ・フーズの買収だった。

当時は、ガット・ウルグアイラウンド(1986年に開かれた多角的貿易交渉)のさなかで、日本政府による小麦の輸入という、枠組みそのものが変わる可能性があった。とにかく早く海外に出て、日本式とは違う、本場のオペレーションを学ぶ必要があった。

強力粉、中力粉、薄力粉でない分類とは?

このとき、ロジャーズ・フーズを買収した日清製粉グループは、大きく2つのことを学んだ。1つ目は当初の目的である小麦を大量生産・販売するノウハウだ。小麦粉の生産は、巨大な製粉装置(ミル)を使うことから規模の経済が働き、設備稼働率の向上が原価低減に直結する。ロジャーズ・フーズがカナダで培ってきた大量生産のノウハウを学んだ。

2つ目として、当時のロジャーズ・フーズでは、きめ細かい提案営業が「できていない」ことを学んだ。これは日清製粉グループにとって驚きであったらしい。日本国内では、小麦粉の利用者である大手製パン・製菓メーカーなどの顧客ニーズを聞いて、小麦粉をブレンドするという作業を繰り返してきたからだ。

小麦粉の種類には、強力粉、中力粉、薄力粉があることはよく知られている。タンパク質(グルテン)含有量の多い強力粉は、パンやギョーザの皮用などに使われる。中間の中力粉はうどん用、グルテンの少ない薄力粉はケーキ、お菓子、天ぷら粉などとして用いられる。この程度の作り分けは、ロジャーズ・フーズでも行っていた。

小麦粉にはもう1つ、灰分(リン、カリウム、マグネシウムなどのミネラル)含有量による品質分類がある。灰分含有量による分類は、日本酒醸造における原料米の精米歩合をイメージすると理解しやすい。

原料米は、周辺部ほどタンパク質や脂質を含んでおり、そのまま醸造すると雑味の多い日本酒になってしまう。そこで、米粒の周辺部を削り落とし、米ぬかとして分離。残った中央部分だけを使って醸造すると、透き通った味の日本酒を造ることができる。

小麦の場合も、周辺部ほど、リン、カリウム、マグネシウムなどのミネラル(灰分)を多く含んでいる。灰分の少ない小麦粉ほど白く冴えたきれいな色で、灰分が多くなるにつれてくすんだ灰白色になる。

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