全米で1日130人の命奪う医薬品の大いなる恐怖

鎮痛剤の過剰摂取問題を引き起こしたのは誰だ

映画『ベン・イズ・バック』は近く日本でも公開(写真:©2018-BBP WEST BIB, LLC)

オピオイドは、ケシの成分やその合成化合物を指し、「オピウム(アヘン)」に似た性質を持つ。鎮痛や陶酔作用があり、医薬品として承認され、処方されてきた。ところが過剰摂取が問題化、トランプ大統領は2017年に公衆衛生上の非常事態として「オピオイド危機」を宣言した。司法省は、疾病対策センター(CDC)による数字として、「オピオイドの過剰使用により、毎日約130人のアメリカ人が死亡している」と述べている。

4月17日、アメリカ司法省は、オピオイドや危険な麻薬成分を含む薬を違法な処方箋により流布させたとして、31人の医師、7人の薬剤師、8人の看護師を含む60人を訴追したと発表した。プレスリリースの表題には、訴追されたケースに含まれるのは、処方箋35万件、医薬品3200万錠にのぼる、とある。ウィリアム・バー司法長官は「オピオイドの蔓延は、アメリカ史上最も致命的な麻薬危機であり、アパラチアはほかのどの地域よりもその被害に苦しんできた」との声明を出した。

アパラチアは、アパラチア山脈周辺のペンシルベニア、オハイオ、ウェストバージニア、ジョージア、サウスカロライナ、テネシー州などを含む一帯を指し、炭鉱や鉄鋼業、製造業が盛んな地域としても知られる。司法省は昨年12月、「アパラチア地方処方箋オピオイド撲滅部隊(The Appalachian Regional Prescription Opioid Strike Force)」を創設。10の連邦地検の検事14人、連邦捜査局(FBI)や麻薬取締局(DEA)の特別捜査官などが、アパラチア地域を中心に処方箋によるオピオイドの流布に関与した医療関係者に焦点をあて、捜査を続けてきた。

プレスリリースによると、ケンタッキー州では、医師があらかじめ署名した空欄の処方箋を事務所職員に渡して流出させたり、フェイスブック上の友人たちに処方箋を書いたりしていた。アラバマ州では、中毒状態に陥っている患者に対し、医師が大量のオピオイドを処方し、1回につき50ドル、もしくは年600ドルの料金を取っていた。テネシー州の看護師は、性的行為と引き替えにオピオイドなどの処方箋を渡していたという。

アパラチア地方の現実、地方紙記者が告発

このアパラチア地方、中西部の「ラストベルト」(さびついた工業地帯という意味)や炭鉱町を含み、トランプ大統領の「票田」でもある。トランプ大統領が、地球温暖化抑止と被害軽減策に取り組む国際条約「パリ協定」からの離脱方針を打ち出したのも、「票田」での受け狙い、と言われる。とすると、オピオイド禍への取り組みも、その延長と思われがちだが、決してそうではない。オピオイド禍をめぐり、司法および行政の対応の誤りを「告発」する動きに突き動かされる形で、司法省は重い腰を上げた。

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