全米で1日130人の命奪う医薬品の大いなる恐怖

鎮痛剤の過剰摂取問題を引き起こしたのは誰だ

今年1月、アメリカのボストンで最愛の家族を失った被害者たちが製薬メーカーに抗議した(写真:Suzanne Kreiter / The Boston Globe via Getty Images)

ジュリア・ロバーツが薬物依存症の息子に向き合う母親を演じるアメリカ・ハリウッド映画『ベン・イズ・バック』(邦題)が近く日本で公開される。密売に関わったり、治療施設、警察、刑務所を行き来したりする依存症患者と家族の苛酷な現実の一端が、描き出される。

アメリカでは今、麻薬成分を含む鎮痛剤の過剰摂取で年数万人が帰らぬ人となる「オピオイド禍」が進行中。全米の州・市などが製薬会社を相手取って民事訴訟を起こし、最近では司法省の特別チームが医師・薬剤師ら計60人を訴追した。20年以上も前に世に出た鎮痛剤が及ぼした影響は根深く、アメリカ社会は苦悩のただ中にある。

映画が伝えるアメリカの現実

映画は5月24日から、TOHOシネマズシャンテなどで全国公開される。

雪が積もり、凍てつくクリスマス・イブの田舎町。薬物依存の治療施設にいる19歳のベンが、突然家に戻ってきた。映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー賞候補となった若手俳優ルーカス・ヘッジズがベンの役を演じる。

物語が進むにつれ、ベンがかつてスノーボードでケガをしてかかった医師から痛み止めの薬を処方され、その処方量が増えたことがきっかけで麻薬中毒になったこと、ガールフレンドのマギーが麻薬の過剰摂取で死んだこと、高校の歴史の教師ががん患者の母親の世話をするなかで大量のオピオイドを手にしてベンらと取引していたこと、ベンは売人ネットワークの一員だったことなどが明らかになる。中毒患者らが麻薬をやめようともがき、ミーティングでお互いを励ます場面や、ベンの友人が重い中毒で廃人のようになった様子が、小さな町で進む事態の深刻さを物語る。

母親役のジュリア・ロバーツは、ヒット作『プリティ・ウーマン』で知られるが、『エリン・ブロコビッチ』では公害企業と闘う女性を演じ、アカデミー賞主演女優賞を受賞。『ペリカン文書』『愛がこわれるとき』など社会派作品にも出演しており、今回も体当たりの演技が光る。

現在進行中の社会問題を扱う難題に挑戦したこの映画の監督・製作・脚本は、ピーター・ヘッジズ。ヘッジズは、過食症の母親に代わって食料品店で働き家族を支える青年をジョニー・デップが演じ、レオナルド・ディカプリオが知的障害を抱える弟役だった名作『ギルバード・グレイプ』の原作者で、脚本も手がけた。アメリカの田舎町に住む人々の暮らしに切り込む作品には、人々の心を揺さぶる迫力がある。

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