全米で1日130人の命奪う医薬品の大いなる恐怖 鎮痛剤の過剰摂取問題を引き起こしたのは誰だ

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昨年8月に出版された本『Dopesick: Dealers, Doctors, and the Drug Company that Addicted America』(直訳すると『禁断症状:アメリカを中毒に追いやった売人、医師たちそして製薬会社』)は、克明にオピオイド禍の実態を描きだしている。著者は、バージニア州ロアノーク市の地方紙の記者だったベス・メーシーさん。本の扉には、計12人の名前と生存年が書かれている。うち4人は19歳でこの世を去り、若い人が多いが、75歳の元炭鉱労働者もいる。著者は、この12人の本人や家族をはじめ、警察の捜査官、検事、救急隊員、医師、薬剤師、服役中の売人への取材を重ね、何が起こったのか、を記録した。

とくにメーシーさんが問題視したのが、「OxyContin(オキシコンチン)」という銘柄の痛み止めの薬。2000年代半ば、連邦検事らが捜査をはじめたが、製薬会社側が巨額の資金を投入して大物弁護士を雇うなど防戦した結果、製薬会社役員を重罪で起訴することができなかったいきさつや司法省内の暗闘にも触れられている。ケガの治療がもとで中毒に陥った炭鉱労働者は訴訟を起こして破れ、薬の売買をめぐるトラブルで死亡した。

メーシーさんが問題視した「オキシコンチン」(写真:ロイター/George Frey)

フットボールやバスケットのスター選手だった子どもたちが、ケガの治療で薬を処方されたのがきっかけで中毒になり、リハビリ治療施設を転々とするありさまが、本人や母親らとの交流を通じて描かれる。家族は、中毒患者らに必要なのは治療・支援なのに、罪人としてしか扱われない非合理を訴える。

4月17日の司法省のプレスレリースには、州・地域ごとに、中毒患者の相談窓口や支援グループの連絡先も掲載されている。メーシーさんの著書を通じて、患者家族が訴えた声が、行政や司法のあり方を動かし始めている。

製薬会社への問題追及

全米各地で、州や市、郡などが製薬会社や販売会社を相手取って民事訴訟が起こされている。最近、その過程で明らかになった文書などを新聞やテレビが入手し、報じることも多くなった。

昨年5月29日には、ニューヨーク・タイムス紙が司法省のマル秘報告書をすっぱ抜く形で、オピオイドの中でもオキシコンチンに焦点をあて、報道した。「製薬会社パーデュー・ファーマ社は、オキシコンチンが市場に出た1996年の直後から、砕いて鼻から吸うなど薬が乱用されているとの報告を受けていたが、ほかのオピオイド処方薬に比べて乱用・中毒は起きにくいとして販売促進を続けた」という。

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