全米で1日130人の命奪う医薬品の大いなる恐怖 鎮痛剤の過剰摂取問題を引き起こしたのは誰だ
この記事はまた、2007年に同社役員3人が乱用・中毒の可能性について誤った説明をしたという比較的軽い罪を認め、罰金を払ったことにも触れている。4年に及ぶ捜査を行った検事らがより重罪で起訴すべきであると主張したが、司法省幹部が認めなかったと報じた。
オキシコンチン絡みの民事訴訟は1600件にものぼるとされる。オハイオ州クリーブランドの裁判所でまとめて審理される方向との報道もある。
パーデュー・ファーマ社は3月26日、「弊社を相手取って起こされようとしている訴訟における申し立てや主張を強く否定する」としながら、「オピオイド中毒危機は緊急の公衆衛生上の課題であり、パーデュー社は引き続き、警察・救急、医療専門家、政策立案者を含むすべての関係者と協力し、立ち向かっていくことを約束する」との声明を発表した。
アメリカではかねて、医薬品業界が政治献金を通じて強い力を駆使していると指摘されてきた。痛みどめ薬オキシコンチンをめぐる問題が販売開始から20年以上経ってようやく表面化したことが、そうした事情を物語っている。
オピオイド禍の舞台が政治や社会問題のスポットライトが当たりやすい東海岸や西海岸ではなく、大手メディアが注意を払ってこなかったアパラチア地方だったことも、問題の「発覚」を遅らせることになったのかもしれない。
研究者が指摘したアメリカ白人の「絶望死」
2015年12月、学術誌『アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)』(アメリカ科学アカデミー発行の機関誌)に、プリンストン大学のアン・ケース教授とアーガス・ディートン教授が発表した折れ線グラフが、世間の耳目を集めた。
教授らは、アメリカ内の
1)中南米系を除く白人の45〜54歳
2)中南米系の45〜54歳
という2つのグループについて、1980年代末〜2010年代初めまでの間の死亡率の変化を示した。そして同じ期間のフランス、ドイツ、イギリス、カナダ、オーストラリア、スウェーデンという先進6カ国の同じ年齢層の死亡率と比較した。
その結果、6カ国+アメリカ中南米系という7つのグループの死亡率が年々減少していくなかで、「中南米系を除く白人」(アメリカ・白人非ヒスパニック系=USW)というグループのみが、特異な動きを見せた。1993〜2013年に際立って死亡率が上昇しているのだ。教授らはその原因は、薬物、アルコールの中毒・過剰摂取、自殺、慢性肝臓疾患としている。アメリカ紙のインタビューに答え、「絶望死」とも呼んだ。
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