昇格した途端「偉そう」に振る舞う上司の心理 「意識高い系」の上司と部下の溝が深まる理由

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1、グループのメンバーが「似たようなバックグラウンド」を持っている
2、「外部の意見」を取り入れない
3、意思決定のための「ルール」が定まっていない

3つの条件に当てはまった集団は個人の見解をなくし、集団心理にとらわれやすくなります。ここから、「日本人は集団心理にのまれやすい」傾向を読み解くことができます。

日本企業は、圧倒的多数が日本語を話す日本人。大多数の社員が大卒者で似たような選択肢の中から就職します。育った環境の差も小さいケースが多く、「似たようなバックグラウンド」を所有しています。

また、最近は変わってきたとはいうものの、会社に対する帰属意識がまだまだ強い傾向にあります。積極的に「外部の意見を取り入れない」割合も高く、コンサルタントなど外部の意見を求める機会は非常に少ないと指摘されています。あったとしても、試験的であることが多いようです。

加えて、「なんとなく前例どおり」「社長の鶴の一声で」といった具合に、「意思決定のためのルール」が決まっていないという特徴もあります。世界的に見ても、日本組織には集団心理が働きやすい土壌が備わっていて、無策に変化を求めるリーダーは静かに牙をむかれやすいのです。

意識高い系リーダーは必然的な存在

ここで視点をチームからリーダーへと移しましょう。「意識高い系リーダー」はある種“必然的な存在”で、彼らが生まれる要因に「役割性格」というものが挙げられます。

これは、社会的な自己、すなわち「上司としての自分」「営業としての自分」「父親としての自分」という役割が大きくなってしまった状態を表す用語です。

昇格した途端、急に「ボス」のように偉そうに振る舞う人は珍しくありません。スタンフォード大学の社会心理学者フィリップ・ジンバルドー氏が1971年に行った「監獄実験」がそれを物語っています。

看守役と囚人役に分けた学生の言動を観察したもので、当初は単なる実験で演じていただけなのに、次第に看守役の学生は強権的になり、囚人役の学生を厳しく威圧するようになりました。

つまり、人は役割を与えられるとそれに性格や言動を合わせようとする性質があるということ。とくにポジションの高いリーダーは役割性格にとらわれやすく、自己評価が現実と乖離しやすいことを理解しておく必要があります。

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フロイトは「集団の心理とは、人間最古の心理である」と述べていて、人類が洞穴で暮らしていた頃から集団心理は存在していたといいます。つまり、このチームの性質はかなり普遍的なものといえ、集団心理そのものをなくすことは難しいでしょう。

そこで重要になってくるのが、チームとリーダー、両方の心理傾向を踏まえたアプローチです。

リーダーという立場になった際、「役割本意で行動してしまいやすい」こと、そして「チームには現状維持バイアスと集団心理が働いている」ことをまずは頭に入れておくことが、息の長いチームリーディングを実現するうえでは欠かせません。

スティーヴン・マーフィ重松 スタンフォード大学心理学者

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Stephen Murphy-Shigematsu

ハーバード大学大学院で臨床心理学博士号を取得。1994年から東京大学留学生センター・同大学大学院の教育学研究科助教授として教鞭を執る。その後、アメリカに戻り、スタンフォード大学医学部特任教授を務める。現在は、医学部に新設された「Health and Human Performance」における「リーダーシップ・イノベーション」という新しいプログラム内で、マインドフルネスやEQ理論を通じて、グローバルスキルや多様性を尊重する能力、リーダーシップを磨くすべなどをさまざまな学部生に指導している。著書に『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社)、『多文化間カウンセリングの物語』(東京大学出版会)、『アメラジアンの子供たち――知られざるマイノリティ問題』(集英社新書)など多数。

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