精神的な「苦痛や依存」を語り合うことの効果 北海道「べてるの家」の当事者会研究とは何か

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「一般の家庭で行われる家族会議では、テーマ自体はもっと素朴かもしれないですね。でも、日本の昔ながらの『男は口数が少ないほうがいい』『おじいさんやお父さんが決めることが絶対』というような家族のあり方から、少しずつ意識が変わって、大人も子どもも気軽に話ができる場を持つ人がでてきたのは、すごくいいことだと思います」

向谷地教授自身も、家族との対話を大切にしてきたという。

向谷地家には4人の子どもがいる。全員がすでに成人しており、3人は実子で1人は里子だった。ほかにもべてるのメンバーの間に生まれた子どもたちを何人も預かりながら生活をしてきた。

キーワードは「情けなさ」

「今から15年ほど前に、メンバー間で子どもがどんどん生まれてベビーブームがあったんです。でも親はなかなか自分で育てられる状態じゃない。そうした子どもたちをうちだけでなく地域で預かってみんなで育ててきました」

いろんな事情で家にやってくるメンバーの子どもたちと、向谷地家の子どもたちは一緒になって育った。深刻な悩みと戦いながら生きている人がいる、いろんな大人がいて、いろんな状況に置かれた子どもがいることを、向谷地家の子どもたちは当たり前のこととして生活の中で学んでいった。

「べてるのメンバーが抱える家族の苦労を、家の中でよく話して聞かせていましたね。経済的にも貧しい中で、家族関係にも恵まれずに育った人たちだけど、その経験のおかげでいろんな人に出会い新しい関係を築こうとしているんだ、ということも。

とはいえ精神の苦労を抱えた人たちと、地域で暮らすというのは、簡単なことじゃない。散々な目にあって失敗もしました。そうした私の弱さも全部話してきました。それに私が遅刻や忘れ物の名人だってことも。そんな話をすると、子どもたちは目を輝かせて聞いてくれましたよ(笑)。とにかくキーワードは”情けなさ”。親は、頼りなくて機嫌がいいのがいちばんいいと思って子どもと対話してきましたね」

べてるでは、今、第2次ベビーブームの兆しがあるという。

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