国民生活の実感と乖離する「GDP」のまやかし 米景気「戦後最高」期に史上最悪の格差拡大

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どこの国でも例外なく、国民は生活が苦しくなってくると、冷静な判断ができない状況に陥ってしまいます。そこにつけ込むポピュリズム的な政治主張によって、多くの人々が極端に右寄りまたは左寄りの思想に感化され、主張が異なる人々の間で憎しみ合いが続くのです。

今のアメリカやイギリスの国家が分断した姿を見ていると、富裕層と貧困層の対立によって衰退したギリシャのアテネやローマ帝国の歴史が思い起こされます(2017年3月9日配信「『中間層の没落』とともに国家は衰退に向かう」、3月17日配信「古代ローマの栄枯盛衰から学ぶべき『教訓』」参照)。

GDPは、減るより増えたほうがいいに決まっていますが(GDPが減れば国民生活はもっと悪くなるため)、GDP偏重主義による政府の景気判断と国民の実感の乖離は、アメリカやイギリス、フランスといった先進国を中心に定着した感があります。

イギリスではEU離脱の是非を問う国民投票が実施される前に、経済の専門家が「EU離脱はGDPの減少につながるためデメリットが大きい」と説明したところ、聴衆の1人が「それはあなたたちのGDPであって、私たちのGDPではないでしょう」と反論したという話は有名です。このときのイギリスは、欧州の先進国の中で最もGDP成長率が高かったのですから、この問題の深刻さを浮き彫りにしています。

GDPより国民生活の実情に近い「景気動向指数」

日本でも政府が「景気拡大は6年余り続いている」と説明していますが、国民の約8割は「景気回復が始まった」という当初から、「そのような実感はない」と答え続けています(2019年3月30日配信の「実質賃金下落の本質は国民への『インフレ税』だ」参照)。

GDPや政府の景気認識より国民生活の実情に近い指標や調査には、私がこれまで繰り返し取り上げてきた「実質賃金」のほかでは、「景気動向指数」と「景気ウォッチャー調査」(いずれも内閣府)などがあります。

景気動向指数とは、景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、 景気の現状を把握したり将来を予測したりするために作成される指標です。この指数が優れているところは、数字に基づいて機械的に景気の基調が判断される点にあります。基調判断には「改善」「足踏み」「上方への局面変化」「下方への局面変化」「悪化」「下げ止まり」の6つがあり、恣意的に判断することはできないのです。

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