国民生活の実感と乖離する「GDP」のまやかし

米景気「戦後最高」期に史上最悪の格差拡大

景気動向指数による基調判断の推移を、景気拡大が始まったとされる2012年12月から振り返ってみると、2014年3月までは「改善」でした。しかし同年4月から2016年9月まで「足踏み」となり、2016年10月から再び「改善」に戻ったものの、2018年9月以降は再び「足踏み」に逆戻りしています。そして2019年1月からは「下方への局面変化」へと引き下げられ、さらに3月には「悪化」へと引き下げられています。

注目すべきは、「改善」のときの指数の上昇幅よりも「足踏み」のときの指数の下落幅のほうが大きいということです。実際に、最新の2019年3月時点の景気動向指数は99.6(2015年=100)となり、2014年3月の105.6より6.0ポイントも低い水準にあるのです。指数そのものだけで判断すると、少なくとも過去5年間の景気は改善どころか停滞しているのが判明するというわけです。

大事なのは「数値」ではなく、実質的な「中身」

また、景気ウォッチャー調査というのは、地域の景気に関連の深い動きを観察できる人々に協力してもらい、地域ごとの景気動向を的確かつ迅速に把握して、景気動向を判断する際の基礎資料として位置づけられています。景況感を示す「現状判断指数」は、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連の3つ指数の合計から作成されています。

現状判断指数の推移を、景気動向指数と同じように2012年12月にさかのぼってみると、46.9だった指数は2013年11月に56.7でピークを打った後、基準となる50.0を下回る月数が上回る月数より多くなっています。

2018年1月以降は50.0を1回も上回っていないばかりか、足元の2019年3月は44.8と今回の景気回復が始まった時点よりも低下してしまっているのです。現実には、「本当に景気回復をしているとは考えられない」結果が明らかになっているというわけです。

私は経済成長率の数値そのものより、その成長率の中身のほうがはるかに大事ではないかと考えています。経済指標の中で最も重視すべき指標は、決して経済成長率の数値そのものではなく、国民の生活水準を推し量ることができる実質的な所得ではないかとも考えています。

ですから、これまでの連載では、国民の実質的な所得を表している「実質賃金」の推移を最も重要視してきたわけですが、そうはいってもGDP統計の精度を高める作業はその信頼性を担保するという観点から重要なことであります。仮にこれからGDPの精度を高めていったとしても、国民が政府のいう好景気を実感できなければ、GDP統計は一国の豊かさを表す代表的な指標とはいえなくなってしまうでしょう。

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