「治療の医者任せはダメ」と医者が力説する理由 病気になったら「正式な病名」の把握が大事だ

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アップルの元CEOスティーブ・ジョブズ氏が罹患したのは、膵神経内分泌腫瘍(NET)という比較的珍しい病気だ。膵臓の癌なのにあれだけ長く生きられたと感心する人もいるが、NETはいわゆる膵癌(膵管癌)とは違って比較的おとなしい悪性腫瘍である。

早期に手術で摘出していれば、もっと長生きができたかもしれない。ジョブズ氏自身も手術を受ける時期を遅らせてしまったことを後悔していたことが伝えられている。

病気になったとき、自分の状態を速やかに理解し、自分自身が納得のいく治療を受ける決断をすることが大切である。しかし、ジョブズ氏ほどの頭脳の明晰であり余るほどのお金を持っていても、病気の治療を後で悔やまなければならなかった一例でもある。

正確な病名を把握する

自分の状態を速やかに理解し、納得いく治療を受けるためにも、医師から病気であることを告げられたら、正確な病名をきちんと把握することが大切だ。そうでないと、病気についてかかりつけ医や知り合いの医師などセカンドオピニオンになる人に相談しても、病名がはっきりしなければ適切に答えてもらえないことになる。あるいは、インターネットで調べようと思っても、キーワードがなければ調べようがない。

キーワードとして例えばGISTやNETなどと正確に把握していれば、ネット上に専門家がわかりやすく書いている説明を見ることができるだろうし、相談した医師も解説してくれるだろう。

また、まれな病気や難病にかかり、その情報がなかったり孤独感を味わっている人も、ネット上で正確な病名で検索すれば患者会や個人のホームページから同じ病気をもつ仲間を見つけたり、病気の情報を得ることができる。

ネットでは、まれな病気の人でも利用し活用することができるが、それも自分の病名を正確に把握していることが前提となる。もし病名が聞き取りにくければ外来で担当医にメモ用紙に書いてもらうことをおすすめする。

病院で医師や看護師・薬剤師から提供される情報はもちろん大切であるが、多忙な診療の中でその情報は十分ではないことも多い。また、患者さんにとって、与えられた情報だけで判断するのではなく、自分で情報を能動的に獲得し、それらをも参考にしつつ最終的な決断をすることが、情報リテラシーのうえからは望ましい。

ただし、インターネットで病気について調べようとすると、それなりの注意が必要となる。まずは、しっかりとした医療機関や厚生労働省、学会などのホームページから基本的な知識や標準治療についての知識を取り入れてほしい。

「○○の特効薬」、「驚異の治癒率」などとうたっているクリニックや民間療法の情報には飛びつかない慎重さが必要だ。金儲けのためのカモにされてしまう。そのサイトが何を目的に情報を流しているかを考える習慣が大切だ。

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