「彼氏のうつ時代」を越えて結婚した2人の軌跡 アラフォー管理職同士の“絶妙な"距離感

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お互いに生活スタイルが確立しているので、ちょっとした衝突もある。例えば、ゴミ出しのタイミング。美幸さんのほうは「小出し派」で、誠二さんは「ためる派」だった。ここは誠二さんが折れた。

「僕が前に住んでいたところはゴミ出しの日が決まっていたので、ためることが習慣になっていたんです。彼女が以前に住んでいたマンションは、24時間いつでもゴミを出せるシステムでした。今、住んでいるマンションも同じなので、彼女に合わせたほうが合理的です」

就寝時間に関しては、早寝早起きだった美幸さんのほうが夜更かし気味の誠二さんに合わせつつある。もちろん、誠二さんが強制しているわけではない。仕事が忙しい平日でも、できるだけ長く会話をしていたいのだろう。

「もっと若いときの結婚だったら、折り合えなかったかもしれません。今はこの生活が落ち着きます。家が楽しい場所なんです。早く仕事を終えて帰りたいな、と毎日思います」

キッチンとテーブルをまめに往復しながらにこやかに話す誠二さん。まさに新婚ラブラブである。言うことはない。

親きょうだいが驚くほど喜んでくれた

2人以上に結婚を喜んだのは、それぞれの家族だった。誠二さんは両親と長く断絶状態だったが、結婚によって急速に融和したと振り返る。

「すごく喜んでくれましたね。20年前から僕の結婚を望んでいた99歳の祖母は『これで死ねるわ!』と叫んだぐらいです」

美幸さんのほうは、独身で「遊び人」の弟が最も喜んだ。

「海外出張も含めて猛烈に働いて遊びたいタイプの弟です。結婚したら自由がなくなると思っているのでしょう。親には申し訳ないと思っているのか、私が結婚して本当にホッとしたと言っていました。父はちょっと寂しそうです。私の名字が変わってしまうと、遠くに行ってしまう気持ちになるのでしょう。

『大丈夫?』と聞いたら、『本音はダメだよ。ボロボロだよ。でも、これでいいんだよ』と言ってくれました。私は父からかわいがられていたんだな、と改めて知りました」

当面の課題は「子作り」である。美幸さんは「できるならば欲しい」と思っていて、だからこそ誠二さんに結婚するか否かを迫った経緯がある。可能性があるうちに試したいと思ったのだ。ただし、今のところ不妊治療は受けていない。

「絶対に欲しい、というほどではないからです。なるようになるかな、と思っています」 

誠二さんのほうも「子どもがいるとより楽しいんじゃないかな~」と思う程度だ。この感覚も夫婦で共通しているので平和が保たれやすい。

それぞれ15年以上は1人で生活をしてきて、これからも1人で生きる力がある2人。でも、一緒に住んでみたら家が想像以上に楽しくくつろげる場所になった。自由がなくなったわけでもない。そして、親きょうだいが驚くほど喜んで安心してくれた。

もはや結婚は当たり前の時代ではない。気が向かなければ婚活はしなくてもいいと思う。でも、信頼し合える人間関係は誰にでも必要だ。一歩外に出ることで、そんな出会いに恵まれることも人生にはある。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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