27歳「発達障害」の彼が会社で見付けた居場所 イオン子会社で働きながら学んだこと

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「僕が所属している陳列チームのキャラバン隊は、障害者雇用で入ってきた人たちなので、僕よりもすごく重い人とかもいます。仕事に対する取り組み方が自分と違うと、あの人はなんでああなんだろうと、それが不満として募ってしまったことがあります」

大谷さん(撮影:今井康一)

チームなので連帯責任を意識するのは当たり前だが、ASDの特徴として、自分が納得したルールは、誰であっても守ることを要求するという特性が出ている。

「例えば極端に作業する速度が遅かったり、力仕事が難しかったり、トイレや休憩のタイミングがわからない人がいると、イライラが募ります。僕たちは自分の作業が終わったら、他の人を手伝うのも仕事のひとつなのですが、できない人もいます。それでまたイライラが加わって、悩みの種になってしまうんです」

大谷さんはある日、仕事を覚えるのが難しい同僚についに怒鳴ってしまったという。頭ではわかっているが、怒鳴ってしまった後で後悔し、その後相手に謝罪したという。ADHDの特性でもある衝動性が出てしまったのだが、この同僚は他の障害の特性で、何度も同じ確認行為を繰り返してしまうというのだ。

「その後、許してはくれたんですが、リーダーに僕のことを怖いですよねって言われてしまって。怒鳴ってしまったことが大きな原因だったんだってわかったんです。仕事を続けていくうちに、自分にとってのハードルは、仕事よりも人間関係の方が大きなウェイトを占めているなと思いました」

発達障害の人にとっては、仕事を覚えるだけで大変なことなのだが、チームでの作業となると、人間関係の構築という、未知の領域にも足を踏み入れなければならないのだ。

自分の長所と短所を把握し、周知してもらう

そこで経験からこれから就職しようと思っている発達障害の人たちへのアドバイスを訊いてみた。

「まず自分の長所と短所を理解することが大切だと思います。長所をどの仕事に活かせるかを意識する。もしくは短所があるんだったら、その短所に対してどのような対策を自分でとっているか、事前に具体的に意識しておくと、その後で違ってくると思います。

同時に職場はみんな初対面の人だから、前もって会社に伝えておかないと、周りの人たちは感じ取れずに、言ってくれないとわからない、ってなります。そのうえでいちばん自分に合った仕事を探してほしいと思います」

発達障害を持っている人の特性の現れ方はそれぞれだ。個々の能力、親の育て方、周囲の理解や対応の仕方など、環境要因によっても大きく異なってくる。それらの相互作用によって生じる問題や解決方法については、正式な対応マニュアルがないのが実情で、個々の企業が取り組んでいかなければならない。同じ障害を抱えていても皆が同一ではないのだ。

人間関係をうまく築けるかどうかは、企業側が発達障害の特性について、どれくらい数多くの症例を理解しているかによるところが大きいのである。

草薙 厚子 ジャーナリスト・ノンフィクション作家

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くさなぎ あつこ / Atsuko Kusanagi

元法務省東京少年鑑別所法務教官。日本発達障害支援システム学会員。地方局アナウンサーを経て、通信社ブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門でアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務める。その後、フリーランスとして独立。現在は、社会問題、事件、ライフスタイル、介護問題、医療等の幅広いジャンルの記事を執筆。そのほか、講演活動やテレビ番組のコメンテーターとしても幅広く活躍中。著書に『少年A 矯正2500日全記録』『子どもが壊れる家』(ともに文藝春秋)、『本当は怖い不妊治療』(SB新書)などがある。

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