33歳、極めて独創的な「文様」で稼ぐ男の生き方 意味を重ねた物語がつながって広がっていく

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アプスーさんは文様が生活の中にあるべきだと思っている。だから仕事としての最初の文様はクツに描いた。

アプスーさんが靴に描いた文様(筆者撮影)

「人間って落ち込むと下を向くじゃないですか。そのとき、自然に靴が目に入りますよね。そこに一生懸命描いた手描きの文様があったら元気が出るんじゃないか?って思ったんですよ」

依頼人は最初、友達や周りの人だけだったが、友達が履いているのを見た音楽関係、デザイン関係、イラストレーターさんなどが作品を身に付けてくれた。そして、

「その作品、なんてブランドの商品?」

と聞く人が現れるようになった。

口コミでさまざまな人に広がっていった

作品を見たと、あるデザイナーさんから、自身が開催しようとしていた「フィジカルテンポ」というイベントに出品しないか?と誘われた。「フィジカルテンポ」の展示はパルコなどで大々的に行われて、さまざまな人に広がっていった。

「靴の製作を始めてから、すぐに食べていけるようになりました。ほとんど営業していないのに、口コミでドンドン広がっていきました」

アプスーさんは、今も靴の製作販売を行っている。1足の靴を仕上げるのに、だいたい1日かかる。それにさまざまな薬剤を塗布して仕上げる。1足1万6000円から2万6000円で販売している(当初はもっと安く販売していた)。

あるとき、動物をモチーフにしたiPhoneケースを作り、展示会で販売した。

ある男性が購入して、仕事の打ち合わせのときに持って行って使用していた。取引先の人は、

「そのiPhoneケースをデザインしたのは誰ですか? 今うちで取り扱いたいアイテムのイメージにピッタリです」

と言われ、トントン拍子でアプスーさんデザインの商品が発売されることになった。

イアパピヨネ社からは、カバン、財布など合計60アイテムほど発売されている。

また、アプスーさんがカレンダーを作ったとき、それを携帯の待ち受けにしてくれている映像制作会社の人がいた。その待受画面を見たアガタパリというパリのジュエリーブランドが一緒にコラボをしたいと提案し、実現した。

「めちゃくちゃ運がいいなと思います。ほぼ営業活動はしていないのに、向こうからどんどん仕事が来て、軌道に乗りました」

次ページ企業だけではなく作家や職人ともコラボ
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