漫画家、村上たかしさん(54歳)の代表作品の1つが『星守る犬』だ。
自然豊かな山中に放置された、朽ち果てた自動車の中から男性の遺体が発見された。男性の横には寄り添うように1頭の犬の遺体があった。彼らはどのような軌跡を経て、その場所にたどり着いたのか? 厳しい現実を、優しい目線で描いたストーリー漫画だ。
作品は話題になり、瀧本智行監督、西田敏行主演で映画化され東宝系で公開された。
『星守る犬』はストーリー漫画だったが、村上さんはこの作品以前はギャグ漫画を描いていた。デビュー作である『ナマケモノが見てた』は、当初京都大学に通いながら連載していたという。
村上さんはなぜ漫画家になったのか。そして『星守る犬』を描くに至ったのか。広島駅近くの喫茶店で話を聞いた。
母親姉妹の子供たちが入り乱れる環境で育てられた
村上さんは大阪の此花区で生まれた。
「此花区は少しやんちゃな地域でした。近所の人は町工場や商店街で働いている人が多かったですね。そんな地域で幼少期を過ごしました」
村上さんの父親は、外で女性を作りほとんど家には帰ってこなかった。
母親は4姉妹で全員、長女が経営する美容室で働いていた。姉妹それぞれの子供たちが入り乱れる環境で育てられた。
村上さんの父母は、村上さんが小学5年生のときに正式に離婚した。
「父親は雑誌のフリーライターが本業だったみたいですけど、アイデアグッズの販売もしていました。例えばホルムアルデヒドや接着剤を混ぜ合わせた芳香剤を売ってました。それをまくと部屋が“新築の香り”になるという商品でした。姉妹商品で“新車の香り”というのも売ってましたね。どう考えても、インチキ臭い商品です(笑)。
そんなハードな環境でしたけど、小さい頃から勉強はできました。関西で有数の中高一貫校に進学しました。実家から学校のある神戸まで片道1時間かけて通いました」
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