まずは、販売されている雑誌ほとんどに目を通した。どの雑誌に応募するか考えたとき、自分と同年代に発信している雑誌のほうが戦いやすいだろうと思った。逆に、少年誌や年配向きの雑誌で素人が戦うのは難しい。
吟味した結果、『ヤングジャンプ』『ビッグコミックスピリッツ』『ヤングマガジン』の3誌に絞った。
半期に1回賞を取ればなんとかなる!
「基本的な練習を積んでいないので、人間を描くと明らかに劣っているのがバレるんです。だから動物のキャラクターでいこうと思いました」
最初に描いたのは『ブレーメンの漫才師』という漫画だった。
ブレーメンの音楽隊のパロディで、動物たちが漫才師を目指して
「レッツゴー3匹や!!」
と大阪に行く物語だった。その漫画を、『ヤングジャンプ』の賞に応募した。
「それがいきなり賞を取りました。佳作で賞金が10万円もらえました。大学の授業料、半期分の金額です。半期に1回賞を取れば何とかなるぞ!! と思いました」
味をしめて、再び応募したのだが今度はカスリもしなかった。
慌てて新たな作品描いて応募すると、次は再び佳作を受賞することができた。
「大学2年生の後期になって『キウイが見てた』という、ショートショートをつなぎ合わせた漫画を描きました。『ナマケモノが見てた』の前身になる作品ですね。これが準入選に選ばれて20万円もらえました。これで3年生分の授業料は稼ぎました」
準入選を取ったので、作品は『ヤングジャンプ』の増刊号に掲載されることになった。アンケートによる人気順位は3位という好成績だった。
学校も無事進学し3年生になった。3年生からはゼミに入り、専門課程の授業が始まる。
「実はそもそも経済には興味がなかったんですよ。だから専門課程の授業が始まったら、全然わからない。授業に出るのが苦痛でした」
そんな折、集英社の『ヤングジャンプ』編集部から電話がかかってきた。「一度、編集部に来ないか?」と誘われた。
「当時の『ヤングジャンプ』の編集部は、『ここはヤクザの事務所か?』っていうくらい怖い顔の人ばっかりでした。編集部全体がタバコの煙でモクモクしてました」
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