日本の独自文化「盆栽」と「緊縛」の密接な関係 

「支配−被支配」の深い精神性を考える

ディオネア。捕虫器の形と生態に官能の豊潤が宿り、生と死が巡る(『官能植物』より)
官能植物』(NHK出版)は、暗がりに放り込まれてきた植物の「官能」に光を当てるビジュアルエッセイ。「植物に性を見るまなざし」を探り出し、深い思索と豊かなイマジネーションを繰り広げていく。同書より、盆栽と緊縛の関係について書かれたコラムをご紹介する。

盆栽文化の発展

日本人と植物の関わりの中に深く根をおろしている「盆栽」は、日本独自の文化として成熟してきた。

その歴史は古く、平安時代に中国から伝えられた「盆景」が起源といわれる。鎌倉時代から室町時代にかけて公家や武士などの支配階級に愛され、『西行物語絵巻』(鎌倉前期)には石づきの樹木、『春日権現験記絵』(鎌倉後期)には二鉢の盆栽が描かれている。

江戸時代になると盆栽は文化として花開き、将軍家も家康、秀忠、家光の三代にわたって盆栽を好み、殊に家光はこよなく愛した。東京都立園芸高校蔵の五葉松と赤松の盆栽、宮内庁蔵の五葉松の盆栽は、「家光遺愛の松」として伝えられたもので、今も大切に保管されている。

盆栽が庶民の間にも普及した江戸時代は、広く園芸文化が発達し、発展を遂げた時代だった。葛飾北斎、歌川広重らの浮世絵に、その様子が描かれている。花菖蒲、菊、朝顔の育種が盛んに行われ、温室や培養を独自の手法で編み出し、万年青(おもと)や松葉蘭の斑入り、葉変わりなどの稀少な株は、コレクションや投資の対象ともなり、屋敷と交換する者が現れるほど価値が高騰する。

こうして植物に対する意識が高まる中、武士の美意識と相まって盆栽の好まれ方も変化し、鉢やしつらえ方など、現在に繫がる盆栽の形はこの時代に完成する。一方で、江戸後期には、京都や大阪を中心に「文人木」の人気が高まる。

文人木とは、その名の通り文人が愛した樹形で、直幹のどっしりとした姿ではなく、細幹で瀟洒な盆栽のことだ。俗世を離れて飄々としている文人自身の姿に重ねたのだろう。さらに明治時代には、樹の自然な雰囲気を大切にした自然盆栽が提唱された。

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