輸送危機で形ばかりとなる「雑誌発売日」の意味 地方書店から驚きと戸惑い、仕方なしの声も

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中国・九州地域の書店に本が届くのが1日遅れることになりました。本の「発売日」の意味を再考する段階にきているのかもしれません(写真:pdiamondp/iStock)

世間の話題は新元号一色となった4月1日から、中国・九州地域への雑誌配送がこれまでより1日遅くなったのをご存じの読者がいるだろうか。これは、雑誌の輸送を担っているトラックの運転手が法律に定められた運転時間や休憩時間などの制限を守るための措置だ。日本の出版流通が危機的状況に陥っていることの表れである。

その措置がどのように一般の人に影響するのか、と首を傾げるかもしれない。この遅れによって当該地域の書店に雑誌が並ぶのが1日遅れることになる。つまり発売当日に書店に行ってもお目当ての雑誌が店頭にないことが常態化する。雑誌販売を経営の柱にしていた地方書店に足を運ぶ人が少なくなる懸念もぬぐえなくなる。

それだけではない。後述するが、実はもっと深刻な問題、つまり「雑誌の発売日」の意味の再考という問題もはらんでいるのだ。

出版流通の大部分はトラック輸送

出版流通の流れを確認しておこう。多くの出版社が東京に集中している日本では、書籍や雑誌は東京とその周辺の流通拠点から、全国の書店やコンビニエンスストアなどに配送されている。

そして、一部で鉄道や船舶も使われているが、今回対象になる中国地方でのトラック輸送の比率は、鳥取県と島根県は100%、岡山県、広島県で70%、九州地区は福岡こそ鉄道コンテナが多くトラックは10%にとどまっているものの、他の各県は50%を占めるなど、多くをトラック輸送が支えている。

このトラック配送は、まず東京から各地域の主要拠点に運ぶ「幹線輸送」と、その拠点から点在する店舗などに配送する「戸配」に分かれるが、今回問題になったのは「幹線輸送」だった。

トラックの輸送については、厚生労働省の告示(労働省告示7号)でドライバーの拘束時間や休憩時間、運転時間の制限を定めている。とくに近年は長距離トラックの追突事故などの発生もあり、強く法令遵守が求められるようになっているなかで「幹線輸送」を担っている複数の運送会社が、出版取次の業界団体「日本出版取次協会(取協)」に対して、輸送スケジュールの見直しを要請した。

取協側では他の輸送会社、鉄道コンテナ、船舶等の代替手段を検討したが、どのルートもコスト面などから対応困難なため、スケジュールの見直しに踏み切ったということだ。実際には地域ごとに発送時期や方法が違っているため、必ずしも対象地域で一律に雑誌の発売日が遅れるわけではないようだが、災害や事故以外で、出版物の配送が遅れるのは異例のことだ。筆者が記憶している限りでは突発的な出来事以外で遅れた事例を聞いたことはない。

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