「『近年、レトルトカレーが美味しくなった』と感じていただいているのは、製造技術の進歩をはじめ複合的な理由が挙げられますが、このレトルト臭の改善が実はかなり効いているのかなとも思います」(中島氏)
こうしたレトルトカレーの世界で起こったさまざまな進化を体現する商品群がある。有名カレー店の監修のもとでメーカーが開発を進める、いわゆる名店系のレトルトカレーだ。開発に際しては相当な”熱量”が投じられると中島氏は言う。
名店のレシピに近づける知識と技術
「多くの場合、最初は社員が普通にお客として何度もお店に通います。そして顔を覚えていただいた頃に『実は私はこういうものなんですが、この味に惚れ込んでしまいまして……』とレトルト化を打診します。もちろん、ここでお断りされることもあります。
興味を持ってもらえた場合は、その後試作品を作り、お店にお持ちします。いい仕上がりだと言っていただくこともありますが、逆にこんなの持ってくるんじゃねえとお叱りを受けることも。こうしたやり取りを何度も繰り返し、店主さまが納得する味となって、ようやく商品化にこぎつけます。開発期間は、お店に通うところから含めると1年は優に超えることが多いです」(中島氏)
店側としても店名が付く以上、その商品が“看板”ともなるわけで、並々ならぬこだわりを注ぐ。メーカー側は技術や熱意でそれに応える。こうして、店が持つ無二のレシピやセンス、そしてメーカーに蓄積された知見や設備を最大限に生かしたハイレベルなレトルトカレーが出来上がるわけだ。
エスビー食品では、2013年に名店の味わいを再現した『噂の名店』シリーズの販売を開始。「おかげさまで現在のレトルト市場を牽引していると言ってもいいほど、売り上げは好調」と中島氏は胸を張る。
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