妖怪ウォッチが「かつてない難局」を迎えた理由 ガンダムも陥った「多様な世代」を狙う難しさ

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原作となっているゲーム最新作も「過去・現在・未来」の3つの世界を行き来して妖怪たちと冒険する世界となっており、「シャドウサイド」はその中の未来世界を描いたものだったのだ。しかし、ゲームは開発の遅れから当初予定されていた2018年中に発売できず、現在は2019年6月6日発売予定とされている。

この「より幅広い年齢層」をターゲットとする戦略は、スマホでもうまくいかなかった。2016年にポケモンGOの後を追いかけるようにリリースされたスマホ位置ゲーム「妖怪ウォッチワールド」は、2018年にようやく200万ダウンロードを突破したが、これはリリース後3日で1000万を突破したポケモンGOに遠く及ばない。このゲームのCMも若者・大人を強く意識したものになっているが、その層には訴求しきれていないようだ。

「ガンダム」シリーズでも陥った失敗

キャラクターとファンの年齢をめぐるビジネス展開の難しさは、妖怪ウォッチにはじまったものではない。今年40年の節目を迎えたガンダムシリーズも、1979年の「機動戦士ガンダム」放送終了後に訪れたブームののち、シリーズ展開がうまくいかない時代が続いた。

本格的な「復権」は放送局を変え、「宇宙世紀」という時間軸(世界観)から脱却した「機動戦士ガンダムSEED」(2002年)だ。クリエーターを一新し、主要キャラクターを美少年で固め、新たに女性ファンからの強い人気を獲得した本作を起点に、ガンダムは古くからのファンや子どもたちなどに向けた複数の作品を多面展開するに至っている。

実はこの多面展開の端緒に、妖怪ウォッチの原案・原作ゲームを手がけるレベルファイブ代表の日野晃博氏も関わった作品がある。それが「機動戦士ガンダムAGE」(2011年)だ。

「機動戦士ガンダムAGE」でも、主人公の幼年期、青年期、そして老年期が描かれ3世代にわたる戦いの歴史が描かれている。一見、こうした多様な世代を物語で描くことは、「ファンが年を重ねる」ことに対する対応策として有効に見えるかもしれない。

しかし、年齢によって物語に求める面白さや感じ取る魅力は異なる。結果として「ガンダムAGE」は、シリーズの中でも、とくに低い視聴率を記録して幕を閉じている。

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