DeNAと関電「異色コラボ」が実現した意外な事情 舞鶴発電所の現場取材で見た石炭火力のいま
京都府のJR東舞鶴駅から車で約20分。3月下旬にリアス式海岸がきれいな若狭湾に臨む舞鶴発電所(京都府)を訪れると、桟橋には豪州からちょうど2日前に到着した大型石炭船が停泊中で、バースに石炭を陸揚げしていた。実はこの発電所を舞台に、かつてないユニークな取り組みが行われようとしている。
電力大手の関西電力とIT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は、今年2月に人工知能(AI)で石炭火力発電所の燃料を最適に運用・管理するシステムを共同開発することを発表した。
困難なスケジュール作成が数分で可能
通常、石炭火力発電所は石炭をバースで受け入れ、サイロでいったん貯蔵した後、ボイラーで燃焼し発電するが、実は石炭の種類などによって混載や混焼ができないといった制約が多くある。そのため、10年以上勤務する熟練技術者が長年の経験とノウハウに基づいて、石炭運搬船の到着予定日から複数のバース、サイロ、ボイラーを運用するスケジュールを作成し、状況変化に応じてその都度見直しながら運用計画を立てているのが現状だ。
そこで白羽の矢が立ったのが、将棋や囲碁といったボードゲームでも活用されるディー・エヌ・エーのゲーム用AI技術。ボイラーで燃焼する石炭の最適な種類やスケジュールを瞬時にはじき出し、効率的な燃料運用につなげる方針だ。
これを導入することで、半日かかっていた燃料運用のスケジュール作成が数分程度で自動作成可能になり、4カ月先まで計画が立てられるようになるという。関電は2019年度に実証実験を開始し、2020年度に舞鶴発電所で本格的に運用開始する。さらに将来はほかの電力会社などを念頭に、システムの外販も視野に入れている。
今回の事業に携わったディー・エヌ・エーの永田健太郎AI戦略推進室シニアマネジャー(理学博士)は、「燃料運用のスケジュール管理は初めてだったが、囲碁や将棋といったゲームに似ていることがわかった。何通りもある選択肢の中からよりよい次の一手を考えるという意味では同じで、ゲームのアルゴリズムが応用できた」と話す。
そのうえで、永田氏は「石炭火力は安い石炭を使いたいが、それだけを使うと燃焼効率が悪くてすべてを燃やせないで手詰まりになる。そういう意味では、次の一手を考えるとものすごい数に増える。熟練者に追いつくようにする一方、囲碁でのAI対人間の対戦ではないが、人間が考えない新たな一手も出てくると思うし、それに価値がある」と見る。
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