「令和」ビジネスに浮かれる面々への冷静な視線

感心されるか非難されるかは紙一重

そしてもう1つ、便乗商法で忘れてはいけないのは、悪質な詐欺。すでに、「元号が変わるとカードが使えなくなるので変えてください」などの手口で銀行口座、クレジットカード、携帯電話などに関連した詐欺が横行しています。

公的機関を名乗った「新元号に伴う料金改正」などのフィッシングメール、アルバム、カレンダー、掛け軸、仏像などの送り付け詐欺なども含めて、手口が巧妙になっているだけに、便乗商法を考えるよりも、自らの身を守るほうが重要なのかもしれません。

もし「自分には関係ない」と思っていたとしても、両親、子ども、祖父母などは大丈夫なのか……。近年、詐欺グループは社会の動きに合わせたプランを立て、予想以上のスピードで仕掛けるようになりました。彼らにとって今回の改元は絶好機だけに、油断は禁物なのです。

無意味な新元号予想に終始したメディア

今回の「令和」発表で、もう1つ気になったのは、メディアの報道。

この1週間、ほぼすべてのテレビ局が長時間の改元特集を組み、ワイドショーではMCやコメンテーターたちが新元号を予想し、全国各地の人々にもインタビュー。発表されたら予想の答え合わせをしていましたが、正解した人はいなかったようです。

そもそも、予想されて当たるような元号はつけるはずがなく、もし当たってしまったとしてもワイドショーで報じられているものは、最終的に採用されないでしょう。良識ある専門家たちはこのような予想に参加しないこともあり、雑誌やネットメディアなどの予想記事も含めて、ほとんど意味のないものだったのです。

4月1日の発表後も、号外に群がる人々を映し、「平成」に関連した人の声を拾い、「令和」の便乗商法や詐欺の存在を報じ、ゆかりの地である福岡・太宰府坂本八幡宮や万葉集を紹介するなど、やはり各メディアは横並びの報道。似た内容ばかりであるうえに、「非公表」にもかかわらず考案者を探したり、ほかの候補案を勝手に報じたりなど、「『令和』に関するものなら何でも報じてやろう」という強引な報道姿勢が目立ちます。

また、スポーツメディアは「令和初勝利」「令和初ゴール」「令和初王者」「令和初メダル」、音楽メディアは「令和初シングル」「令和初ツアー」「令和初コラボ」などと、まだ約1カ月も先のことであるにもかかわらず、令和のフレーズを多用。まるで、「今は『令和』というフレーズを使わなきゃ負け」とばかりに、企画の切り口や見出しに使っています。

私も長年多くのメディアとやり取りしていますが、テレビ、新聞、雑誌、ウェブなどのすべてでこのような傾向があり、まさに悪癖。しかし、このような安易な切り口や見出しでは、目の肥えた現代の人々を喜ばせることはできず、すぐに飽きられてしまいます。

改元される5月1日の前後には“本番”として、また今回のように「平成最後」「令和初」などの報道が飛び交うでしょう。しかし、メディアに求められているのは、お祝いムードを楽しむ報道ばかりではありません。

そればかりでは、人々のから騒ぎをあおるだけであり、改元による公的組織やシステム上の動きなどの社会的な視点も報じるのが望ましいでしょう。

前回の改元時は自粛ムードだっただけに、「今回は明るく盛り上がりたい」という気持ちがある人もいるのでしょう。

ただ、この時点での騒ぎ方を見て、10月31日以前の数週間、本来の意味を離れたから騒ぎを繰り返し、便乗商法が跋扈(ばっこ)するハロウィーンを思い出してしまいました。

はたして改元は、ネットメディアの発達とSNSの普及とともに盛り上がっていったハロウィーンと同じようなムードでいいのでしょうか。約30年間のときを過ごした平成に思いを馳せ、来る「令和」にほのかな期待を抱く……。日々情報であふれ、事件、事故、天災の絶えない時代だからこそ、穏やかな改元もいいのかもしれません。

世界で元号のある国は少ないだけに、「日本の文化として大切にしたい」という気持ちがあれば、ビジネス、メディア、世間の人々、それぞれが落ち着いた気持ちで改元を迎えられる気がするのです。

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