会社を悩ます「悪質クレーマー」が減らない理由 下手に出るしかない担当者のジレンマ
実際、この女は「これまで500回くらい成功した。現金や商品60万円以上をだまし取った」と供述した。また、2013年秋に大阪市内のケーキ店で商品を購入した際、髪の毛が入っているとクレームをつけたら、レシートや現物を見せることなくお詫びの商品をもらえたことがきっかけだったという趣旨の供述をしており、このときの成功体験が一連の犯行に駆り立てたと考えられる。
悪質クレームが増える一因として、この女のように、理不尽な要求でも店側が受け入れてくれた成功体験に味をしめて常習化することがあると思う。
中には、企業が目指す「顧客満足」を逆手に取って、やりたい放題のクレーマーもいる。そのため、最近では悪質クレームを消費者による嫌がらせ、つまり「カスタマーハラスメント」とみなして対応しようとする企業も登場している。
クレームに毅然と対応できない理由
「カスタマーハラスメント」と考えられるケースには、店や企業が毅然とした態度で厳格に対応すればよさそうなものだが、実際にはそうはいかない場合が多い。これは、次の3つの理由によると考えられる。
(2)SNSによる不祥事の拡散
(3)グレーゾーンの拡大
(1)顧客第一主義の呪縛
まず、「お客様は神様」という顧客第一主義がサービス業の現場に浸透している。そのため、上司から指示されなくても従業員が無言の圧力を感じるのか、消費者の理不尽なクレームや不当な要求にも無理して対応し、必要以上に責任を果たそうとする。
その背景には、クレームは消費者の意見を察知するアンテナであり、サービスを向上させるための有益な情報になりうるという考え方が根強いことがある。このような考え方自体を否定するつもりはないが、それに縛られて理不尽なクレームに対しても誠意ある対応をしようとすると、悪質なクレーマーにつけ込まれやすい。
ときには、クレーム対応に追われて本来の業務に支障をきたし、一般の客に対するサービスレベルの低下につながることもある。とくに、まじめな従業員ほどクレームに誠実に対応しようとするあまり、自縄自縛に陥りやすい。その結果、クレーム対応に疲弊した従業員が次々に辞めて、人手不足に陥りかねない。
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