会社を悩ます「悪質クレーマー」が減らない理由 下手に出るしかない担当者のジレンマ
ホワイトゾーンの対極が「ブラックゾーン」であり、意図的に金品を狙って詐欺や脅迫まがいのクレームをつける。かつては反社会的勢力の「プロクレーマー」が跋扈(ばっこ)していたが、暴力団対策法の施行後、その数は激減した。ただ、先ほど紹介した詐欺容疑で逮捕された無職の女のように、普通の市民が悪質化してブラックゾーンのクレーマーになることもある。
問題は、ホワイトゾーンとブラックゾーンの中間に位置する「グレーゾーン」であり、この手のクレーマーが最近急拡大している。クレーマーの大多数をグレーゾーンが占めているうえ、ホワイトに近いゾーンからブラックに近いゾーンまで幅が広い。
グレーゾーンで多いのは、必ずしも最初から悪意があるわけではなく、ちょっとしたことをきっかけにエスカレートして、大声を張り上げたり、文句を並べ立てたりするクレーマーである。この手のクレーマーは、しばしば不安やストレスなどを抱えている。それを発散する手段がほかにないのか、商品やサービスに少しでも気に入らないところがあるとクレームをつけて鬱憤を晴らそうとする。
クレーム担当者のジレンマ
さらにエスカレートすると、過剰な要求を執拗に繰り返すこともある。文句をつけているうちに「あわよくばいい思いができるのではないか」という期待が膨らむからだ。「いい思い」とは、金品をせしめたり、特別待遇を受けたりすることによって得られる満足である。それを求めて執拗にクレームをつける客を前出の援川氏は「難渋クレーマー」と呼んでいる。
グレーゾーンは幅が広いので、クレームをつける客がいったい何を求めているのか、どんな意図を秘めているのかを従業員は見極めなければならない。しかも、ときには激高した客をなだめながら、それを見極めなければならないので、毅然とした態度を取りにくい。
上記の理由から、クレーマーに厳しく対応するのはなかなか難しい。厄介なことに、そういう現状を熟知し、「どうせ厳しい対応はできないだろう」と足元を見て居丈高にふるまうクレーマーもいる。この手のクレーマーを育てているのが担当者の過度の配慮や低姿勢であることは、否定しがたい。
だからといって、現場の従業員がクレームを無視したり、おざなりな対応をしたりすれば、すぐにSNSに投稿される。その結果、さらにクレームが殺到する恐れもあるので、みな戦々恐々としている。
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