会社を悩ます「悪質クレーマー」が減らない理由 下手に出るしかない担当者のジレンマ

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しかも、顧客第一主義は構造的な問題をはらんでいる。皮肉なことに、5000件以上のクレーム相談を解決に導いた援川聡氏が指摘しているように「サービスを提供する側が顧客満足(CS= Customer-Satisfaction)を追求すればするほど、便利な世の中になればなるほど、『満足』のハードルは高くなり、不満を感じる人が増え、ささいなことで怒りを爆発させる『モンスタークレーマー』が増加するという図式がある」(『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』ダイヤモンド社刊)。

これは、消費者の期待値が上がると、それに添えない商品やサービスに対して不満を覚える消費者が増えるからだろう。

ネットに悪評が拡散される恐怖

(2)SNSによる不祥事の拡散

SNSによる不祥事の拡散も重要な要因だろう。SNSが普及し、誰でも簡単に情報発信できるようになったので、たった1度の対応ミスでも、ネット上に拡散される恐れがある。そうなれば、ブランドに傷がつき、顧客離れを招くのではないかという恐怖感が強い。だから、「騒がれたくない」「臭いものにはふた」と考えて、消費者の理不尽なクレームに対しても過剰適応気味の対応をしてしまう。

しかも、前出の援川氏が述べているように「クレームの発生頻度がニュースや口コミによる『情報量』と相関関係にある」(同書)のはたしかだ。例えば、食品の異物混入事件が立て続けに報じられると異物混入を疑うクレームが相次ぎ、食品偽装問題が連日報じられると材料の原産地や消費期限を疑うクレームが相次ぐ。

店や企業としては、SNSによる拡散はなるべく避けたいという気持ちが強い。だから、できるだけ波風を立てないように、消費者の顔色をうかがいながら低姿勢で対応するしかない。毅然とした態度を取るのはなかなか難しいのが現状である。

(3)グレーゾーンの拡大

クレームのグレーゾーンが急拡大していることも、店や企業が毅然とした態度を取れない一因だろう。前出の援川氏は、クレームを「ホワイト」「ブラック」「グレー」の3つのゾーンに分けているが、この中でグレーゾーンが急拡大している。

「ホワイトゾーン」は、正当な要求や苦情を申し立てるケースで、厳しい口調で問い詰めたり、報告書の提出を求めたりすることもあるが、要求内容に不合理な点はない。商品やサービスを提供した側に非があるので、「お客様の声」として大切に扱い、返品や返金に応じるべきだろう。

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