東京の「生活保護」はまったく機能していない

いまの日本は「階層」がはっきりしている

中村:あと、これまでの取材で憤りを感じたのは「官製貧困」ですね。自治体の臨時職員とか、介護も保育もそう。今回の取材では、非正規の図書館司書に話を聞いたんだけど、彼女の痛々しい言葉はいまでも忘れられない。

『その日暮らしは十分できます。もっと経済的に厳しい人がいるのも十分承知はしています。けど、ずっとギリギリの生活で、なんの贅沢もしていないのに貯金すらできない。嘱託は1年契約、更新は最長5年と決まっていて、いまは4年目です。来年はすごく頑張っても、仕事で成果を出しても確実にクビになります。低賃金なので蓄えはないし、年齢ばかり重ねて、私はいったいどうなってしまうのだろう』って。

国や自治体が関わる非正規雇用は、最低賃金や最低生活費に合わせて制度設計している。国や自治体が積極的に国民や市民を貧困化させているので、もう救いがない。

藤田:自治体の窓口に行くと、だいたい生活保護基準ぐらいの手取り給料で働いていますからね。昨日まで困窮者の相談を窓口で受けていたけど、その2カ月後には自分が生活保護とか。平気でそういうケースがある。どこの自治体も非正規雇用は多いし、部署によっては過半数以上が非正規。低賃金の人は激増していますね。

中村:自治体が市民を貧困に追い込んでいるんだから、もう仕方ないのかなと思う部分がある。公的機関の男性正規職の女性非正規に対するパワハラもすごいみたいだし、もう日本はダメなんだなって感じる。

「ちゃんと賃金上げろ」という労働運動が必要

藤田:だから労働運動が必要なの。「ちゃんと正社員として雇え」とか「ちゃんと賃金上げろ」とか「職場改善しろ」と要求していかないと変わらない。抵抗をしないとそのままです。先ほどの大学の学費も同じで、貧困に慣れてしまって、このままでいいやって意識がずっと続いているんですよね。

中村:やっぱりそこしかないんですね。

藤田:希望はそこしかないですね。だから中村さんが可視化した後は、僕らがそれを引き取って、当事者に立ち上がってもらう。当事者が「ちょっとこれはおかしいよ」っていうことを言って権利を要求していかないと、ひどくなるばかりですね。

中村:まあ、そうでしょうね。消費税増税は貧困層に直撃だし、認知症老人は数年以内に700万人を超える。危機的状況なのに、どこをみても社会保障の削減の議論ばかり。

1億2000万PV超の東洋経済オンラインの人気連載、待望の書籍化。『東京貧困女子。──彼女たちはなぜ躓いたのか』(撮影:梅谷秀司)

藤田:社会保障費はずっと上がり続ける中で税収は増えない。でも、生活保護がどんどん増えているから、社会保障費を削りながら、年金医療も削減という流れは2021年以降はとくに顕著でしょうね。近い将来は「少ない金額でもよければ、どうぞ」ってなっていくかな。

中村:いままで3食食べていたのに1食に減らして、みんななんとか生き延びろってこと? 路上で野垂れ死にする人を見ることが日常になるのも、もう秒読みじゃないかって覚悟しています。

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