藤田:僕はもともと就職氷河期世代で、ホームレス状態の人とか、困窮する人たちにシンパシーがあった。「自分も将来なるんじゃないか」という恐怖感からです。路上生活者を訪問しながら味噌汁を配ったり、おにぎりを配る活動をしていると、誰もが普通に貧困になる可能性を実感する。本当に他人事ではなかった。
中村:非正規化が進んで本当に仕事が安定しなくなった。僕も含めて想像ができるのは来年くらいまでで、もうその先はわからない。女性の厳しすぎる現状を目の当たりにして、個人的には正直、近いうちに自分は死ぬかもって覚悟するようになった。最近は明るいこと、前向きなことを考えようって気持ちの方向転換をしています。現実逃避だけど。
「生活保護」を嫌がる女性たち
藤田:貧困の現場からは声を上げる必要はあって、まだまだ悲惨な現実が中流以上の層には届いていない。例えば、生活保護はほとんど機能していません。
中村:かなり苦しい状態でも、女性たちは生活保護を嫌がりますね。郊外になると、特にその傾向があって、誰かに迷惑はかけたくない、みたいな言葉は何度もでてきた。
藤田:支援しながら常々思うのは生活保護なり、制度をもうちょっと使いやすくする必要性があるということ。女性は受けにくいし、高齢者も持ち家や年金があると受けにくい。ほかの国と比べると捕捉率が低いので、国民がどんどんと貧困化している。
中村:どのような制度がどのようになれば、いいのでしょう?
藤田:生活保護は、生活扶助費、住宅扶助費、医療扶助費など、8項目の扶助があるのですが、それを分解できれば圧倒的に使いやすくなります。若い女性でいえば、住宅扶助があれば助かるとか。
中村:いまの非正規の賃金水準だと、生活保護の最低生活費を割ることもある。家賃のかかる単身や、ひとり親ではとても普通の生活はできない。人によるけど、貧困のボーダーラインの人たちは家賃分程度、大雑把にいえば月5万円くらいのお金が足りていない。
藤田:生活保護の分離論というのですけど、いまの制度はもう生活に困窮したら8つの扶助をガーンと全部支給。ほかの国だと、困窮する前に予防的に分離して支給する。とことん困る前に社会保障を支給することは、世界的にみると標準的な福祉政策です。
中村:東京だと家賃がかかるだけで貧困化する。住宅扶助だけで生活が立て直せる人は、たくさん存在しますね。
藤田:日本はもうどうしてもホームレス化とか、あるいは風俗店に行っても精神疾患で働けない、みたいにならないと生活保護受給にならない。本当はその手前、家賃だけとか医療費だけでも支給してあげれば、ずいぶん変わるはずですよ。